東大院が教育プログラム開始 武田薬品・岩﨑日本管掌 医工連携で「次世代のグローバルリーダー育成」
公開日時 2022/07/26 04:51
東京大大学院工学系研究科は7月25日、記者会見を開き、武田薬品など産業界と連携し、グローバルで活躍する人材を育成する教育プログラムを開始すると発表した。データやテクノロジーを利活用できる人材がグローバル企業から学ぶことで、社会課題解決に向けて実践力を鍛えることが狙いという。武田薬品らの寄付により、プログラムは運用される。武田薬品の岩﨑真人代表取締役日本管掌は、「世界に誇る高い研究力を有する東京大学とグローバル企業に成長できた武田薬品がそれぞれの持ち得る専門性を活かし、グローバルで活躍する次世代リーダーを育成するために、産学共同教育プログラムに参加することを決めた」と話した。
◎工学系研究科で学ぶトップ15%の学生対象 基金創出で民間企業が拠出
教育プログラムは、工学系研究科で学ぶトップ15%の優秀な大学院生を対象として、世界で通用する実践力を鍛える様々な教育プログラムを提供するというもの。企業の経営トップクラスによるスペシャルレクチャーや、海外インターンシップや国内外サイトの訪問などを行う。武田薬品は岩﨑日本管掌が学生向けにスペシャルレクチャーを行うほか、湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)の研究開発サイトを訪問するなどを行う。教育プログラムの運用に際しては、「工学系WINGS産学協創教育推進基金」を創設。武田薬品やソニーグループなど民間企業が寄付を行っている。
東京大工学系研究科の染谷隆夫研究科長は、「現代社会が抱える地球規模の課題が困難さと複雑さが増している。これらをデータとテクノロジーで解決を目指す工学への期待が日に日に高まっている。東大大学院では基礎力や高度な研究力を鍛える研究力はこれまでにも充実してきていたが、基礎力だけでは社会課題を解決することは困難だ。この取り組みを通じ、グローバル企業と産学連携の非常に緊密な関係を築き、ギアチェンジをして実践力を鍛えていきたいと願っている」と説明した。
◎武田薬品・岩﨑日本管掌「医工連携でイノベーションをリードする人材育成が欠かせない」
武田薬品の岩﨑日本管掌は、「240年以上の歴史を通じ、世界80以上の国、リージョン、地域で事業を展開するグローバル企業となったが、そうなったいま改めて振り返って、製薬産業は患者さんに貢献したい、公衆衛生の観点から地球の環境に貢献したいという想いを持った多様な人材により支えられている」と述べた。現在の製薬産業については、新薬が多く創出された一方で依然として、アンメットメディカルニーズが多く残されていると説明。「創薬の難易度はいままでに比べて各段に難しくなっている。創薬のためには多様な治療手段、モダリティのアプローチが大切になる。多様なモダリティを追求するとなると、多様なバリューチェーンの構築が必要になる。製薬産業は、大変な転換期にあると言える」との見方を示した。
そのうえで、「研究、開発、製造、患者さんに医薬品を届ける一連のバリューチェーンのすべてのステージにおいて、すべてのステージにおいて医工連携の重要性が増していると考えている。医工連携を通じてイノベーション創出をリードする人材育成が欠かせないという結論になる」と述べた。
今回のプログラム参画を通じ、社内への還元も視野に入れる。「これまでも武田の社内では、グローバル人材育成のためのプログラムや、データやデジタルの活用などによる新しい領域を含めて全従業員に生涯を通じて学習できる機会を提供してきているが、今回のプログラムへの参画は当社の従業員にとっても学びの機会となり大きな意味を持つ」と述べた。
自身も8月に学生に対して経営トップとしてスペシャルレクチャーを行う予定で、「グローバル規模での人材交流も視野に入れながら、様々なプログラムを通じ、グローバルで活躍できる次世代リーダーの育成に尽力する」と述べた。
◎東京大工学系研究科・染谷研究科長「武田薬品は文字通りのグローバル企業」
東京大工学系研究科の染谷研究科長は、「いま、医工連携はすごい勢いで進んでいる。製薬業界でもデータ活用は重要になってきている。製造のDX化も進んでいる。製薬業界との連携は大変進んでいる。このなかで、武田薬品は文字通りのグローバル企業で、経営もグローバル化している。中の人材もグローバル化されている。当然、マーケットもグローバルである。大学院生が連携しながら、グローバルな経験をすぐに積んでもらう場として大変ありがたい連携先であると考えている」と述べた。