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ホライゾン 日本市場に本格参入 甲状腺眼症治療薬teprotumumabを開発、自社販売目指す

公開日時 2021/12/03 04:51
希少疾患の新薬開発に注力しているアイルランドの製薬企業ホライゾン・セラピューティクス社が日本市場に本格参入する。世界初の甲状腺眼症治療薬teprotumumab(一般名、米国製品名:TEPEZZA)の国内第3相臨床試験を22年上半期に開始する予定で、将来の自社販売を念頭に、日本法人の体制整備も進める。採用活動では、アンメットメディカルニーズを理解し、サイエンスやイノベーションを理解した上で医師らとコミュニケーションできるスキルを重視する。

ホライゾンのエグゼクティブ・ヴァイスプレジデント兼国際部門長のヴィクラム・カルナーニ氏は12月2日、ミクスなどの共同取材に応じ、「当社は世界中の希少疾患、自己免疫疾患、重度の炎症性疾患に苦しむ患者さんの生命に関わるニーズに対応するため、長期的な世界進出戦略に取り組んでいる」と述べ、teprotumumabで日本市場に本格参入すると表明した。

◎米国で最初かつ唯一のTED治療薬として承認

teprotumumabは完全ヒト型モノクローナル抗体製剤で、甲状腺眼症(TED)の病態生理を促進する重要なメディエーターであるインスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)を阻害する。

米国では同剤がTEDに対して手術以外の選択肢を提供できるとして優先審査、迅速審査、希少疾病用薬、ブレイクスルー・セラピーに指定され、2020年1月に、TEDを適応症とする最初で唯一の治療薬として承認された。臨床試験では24週時点でTEDによる症状のひとつの眼球突出が2mm以上減少した患者の割合が、プラセボ群と比較して有意に高いことが確認されている。

◎患者組み入れ開始は22年上半期 予定被験者50人

このほど公開されたteprotumumabの国内試験の概要によると、試験は活動性TEDの日本人患者を対象にteprotumumab(開発コード:HZN-001)を評価する第3相無作為化二重遮蔽プラセボ対照並行群間比較多施設共同試験。teprotumumabを3週ごとに1回、24週間投与したときの有効性、忍容性、安全性、生活の質をプラセボと比較検討する。実施予定被験者数は50人。

カルナーニ氏は、「現在、施設のバリデーションや患者のスクリーニングを行っている。患者の組み入れは22年上半期になる。組み入れ自体は6カ月を想定している」と明らかにした。

日本市場への本格参入は、パートナー企業とともに展開するか、自社のみで展開するかも気になるところ。同社はこれまでに、田辺三菱製薬に視神経脊髄炎スペクトラム障害治療薬ユプリズナ点滴静注の日本や韓国などの権利を許諾し、同剤は日本で今年3月に承認された。同剤は重症筋無力症やIgG4関連疾患でも共同でグローバル第3相試験を実施している。

カルナーニ氏は、teprotumumabの米国上市の成功体験から、「米国の患者に大きなメリットをもたらしていると、この1年半、非常に強く思っている」と話した。そして、「日本の患者にも、当社としてteprotumumabを届けたい」と述べ、同剤を日本で自社開発・販売する考えを示した。グローバルに30近くの開発プロジェクトがあることを紹介しながら、「日本は非常に大切な市場。teprotumumab上市後は、他のパイプラインも日本に投入する可能性は大いにある」と語った。

◎「患者が外科手術をしなくてもすむようにすることが我々の最大の目標」

TEDの認知向上や、国内のキーオピニオンリーダー(KOL)や専門医とのパイプをより強固にするため、21年は日本内分泌学会総会、日本眼形成再建外科学会学術集会、日本臨床眼科学会、日本甲状腺学会学術集会で共済イベントを実施した。12月には日本神経眼科学会総会でのイベントを予定している。

ホライゾンのインターナショナルメディカルアフェアーズ兼パイプライン戦略担当のクイン・ディン氏は共同取材で、日本眼形成再建外科学会でのイベントのねらいについて、「(同学会所属医師は)TEDが進行し、外科的な介入が必要な患者さんに遭遇する機会が多いと考えた」とし、「早期発見、早期治療で、患者さんが外科手術をしなくてもすむようにすることが我々の最大の目標」と強調した。

TEDは眼球背後の筋肉や脂肪が炎症を起こし、複視や斜視のほか、眼球を前に押し出し、眼球突出を呈する疾患。失明の恐れもある。バセドウ病患者の最大50%がTEDを発症するといわれている。

◎求める人材に「営業、学術、研究開発とも、サイエンスをよく理解できること」

ホライゾンは08年に設立された。希少疾患を患うティム・ウォルバートCEOは、「私は希少疾患の患者さんの苦しみを理解できた。それは現在も変わっていない」といい、「難病患者さん1人ひとりに目を向ける方針に変更はない」としている。アンメットメディカルニーズをより理解できる強みを生かして自社創製や導入で開発候補品を拡充。現在、希少疾患、自己免疫疾患、重度の炎症性疾患を対象に約30の開発プログラムがある。

本社はアイルランドのダブリンに構え、米国、欧州、ブラジル、カナダに拠点を持つ。従業員は1800人以上。日本法人は21年5月に神戸に設立し、現在、社長の人選やスタッフの採用活動を進めている。カルナーニ氏は求める人材やスキルについて、「当社はサイエンス志向の強い会社」と強調した上で、「営業、学術、研究開発とも、サイエンスをよく理解できることは非常に重要。サイエンスやイノベーションを理解し、これに基づいてコミュニケーションできることは大事なスキル」と話した。
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