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アイン、ANA 北海道稚内市でドローンを用いた医薬品配送で実証実験 高齢化が進む過疎地域の対応視野

公開日時 2021/11/05 04:53
アインホールディングスとANAホールディングス、経済産業省北海道経済産業局らは11月4日、北海道稚内市で実証実験として無人航空機(ドローン)を用いた医薬品配送を行ったと発表した。内閣官房、厚生労働省、国土交通省は6月に、「ドローンによる医薬品配送ガイドライン」を策定しており(関連記事)、これに準拠した取り組みは国内で初めて。アインホールディングスの土居由有子氏は同日開いた説明会で、高齢化が進む2025年に向けて都市部以外で過疎化が進むと見通したうえで、「マンパワーだけでは補えない。機械化を人とミックスして地域に対してインフラを確保することが重要になる」と実証実験の意義を語った。

実証実験では、市立稚内病院で模擬の高血圧患者がオンライン診療を受診後、アイン薬局稚内店にFAXで送付された処方箋に基づき、調剤・オンライン服薬指導を実施した。服薬指導はPHRを活用し、受診時以外の患者の自宅での血圧値の変動などに基づいて実施した。処方箋医薬品は、ドローンの基地局に薬局のスタッフが配送し、配送後にANAのスタッフが回収し、模擬患者宅に届けた。へき地や離島では、オンライン診療・服薬指導を受けても医薬品を受け取るのに数日間かかるなどの課題があったが、ドローンの活用でこうした課題を克服し、緊急時の対応が可能になることなども期待される。

◎品質確保へ 温度管理はスマホで常時確認

「ドローンによる医薬品配送ガイドライン」では、薬剤の品質確保や、患者本人への速やかで確実な授与、患者のプライバシー確保などを十分に検討し、ドローンが最適な配送手段だと判断した場合に活用するよう、求めている。アインホールディングスとANAホールディングスは共同で、ガイドラインに準拠した手順書の作成や、配送管理システムの整備などに取り組んだ。

 具体的には、アインとANAがともに業務手順書を作成するとともに、配送管理システムを開発した。患者本人への確実な授与と紛失防止も重要になるが、配送追跡サービス(ADOMS)を活用。「準備中」、「集荷待ち」、「お届け済み」など状況を常にスマートフォンで把握できるようにした。また、ガイドラインで本人確認をして手渡すことが求められるなかで、開錠に必要な番号は患者にSMS通知を活用した。

医薬品の品質確保に向けては、「本人または関係者以外は開封厳禁」との旨を明記。容器に鍵をつけ、施錠することが可能なボックスを用いた。温度管理も可能になっている。箱の中と外、両方の温度管理ができ、スマートフォンを通じて把握できるのが特徴となっている。地上と上空で温度差があることも把握できる。土居氏は、「社会実装に向けて、温度管理が必要な医薬品もこの仕組みを使って実証していきたい」と話した。

◎ANA・信田氏「確実に運べる技術を作りこんでいく」と意欲


アインとANAは20年7月に、国内初となるオンライン診療・服薬指導後のドローンによる医薬品配送の実証実験を実施。これを皮切りに日本全国で実証実験も行われてきた。こうしたなかで、明確な基準がないことが実証実験を実施するうえでの一つのハードルにもなっていた。ANAホールディングスの信田光寿氏は、「ドローン事業者としては、医薬品の知見が特になく、法律関連で調べることに苦労した」と振り返る。これが一つのきっかけとなり、「ドローンによる医薬品配送ガイドライン」の策定にもつながった。

今回の実証実験では「手順書などを作って配送システムを作り、アインホールディングスからフィードバックをいただく。PDCAを回せているのは一つの大きな進展だ」と自信をみせた。そのうえで、今後の事業化に向けて、飛行1回当たりのコスト抑制や安定飛行を課題としてあげた。信田氏は、「ドローンの緊急・高速配送では急性期の薬の配送を目指していきたいが、まだまだ就航率、安全性なども課題がある。確実に運べる技術を作りこんでいく」と意欲をみせた。

◎アインHD・土居氏「機械化、無人化を人とミックスして地域のインフラを確保」


アインホールディングスの土居氏は、「日本は、非常にトラック輸送が津々浦々発達しており、安価で動いている。そこに対して現在はそれほど不自由していない。当社は日本全国に1000店舗以上の薬局があるので即日配送などもスムーズに行っている。ただし、これが3年後、5年後になったときに、特に都市部以外、北海道でいえば札幌市以外の地域では、中核都市以外の周りの郊外などは物流網が途絶えてしまう。現在でも進む過疎化も進展する」と見通した。そのうえで、「マンパワーだけでは補えない。医療者だけ、介護者などのコメディカルだけ頼るのは非常に難しい。機械化、無人化を人とミックスして地域に対してのインフラを確保することが重要になる。特に医療の場合は確実に患者さんの手に必要な医薬品が配送されることは必須条件になってくる。そういう意味でも、今回の取り組みは非常に大きな意味がある」と語った。新型コロナの感染拡大や自然災害などが起きた際に活用できるなどのメリットも強調した。

今回の実証を発表したのは、BIRD INITIATIVE、ANAホールディングス、アインホールディングス、日本電気株式会社(NEC)、経済産業省北海道経済産業局の5者。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託した事業「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」(DRESSプロジェクト)の一環として実施された。プロジェクトは、政府が2022年度をめどに、「有人地帯での目視外飛行(レベル4)の実現」を目標に掲げるなかで、2017年から実施されており、21年度が最終年度となっている。
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