薬食審・第二部会 ロナプリーブのコロナ発症抑制、皮下投与の特例承認を了承
公開日時 2021/11/05 04:52
厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会は11月4日、中外製薬の新型コロナウイルス感染症治療薬ロナプリーブについて、「SARS-CoV-2による感染症の発症抑制」の効能追加と、単回皮下注射の用法追加を特例承認することを了承した。厚労省は、「早ければ5日にも特例承認する」としている。今回、皮下注製剤が加わったことで、製品名はこれまでの「ロナプリーブ点滴静注セット」から、「ロナプリーブ注射液セット」に変更する。
特例承認されると、効能・効果は「SARS-CoV-2による感染症及びその発症抑制」になる。これまでの治療目的の使用に、予防目的の使用が加わる。
厚労省は部会後の記者説明会で、予防目的の使用が加わることの臨床的意義について、「感染症予防の基本はワクチン接種」と強調した上で、「本剤は、ワクチン接種では効果が不十分と考えられる者等に対しても、新型コロナの発症抑制に関する選択肢を提供する初めての薬剤として、その意義は大きい」とコメントした。
◎予防投与 3要件全て満たす者が対象に
予防目的の使用では、添付文書にて、「感染症の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない」とした上で、3つの要件を全て満たす者を予防投与の対象にすると記載する。3つの要件は、
(1)SARS-CoV-2による感染症患者の同居家族又は共同生活者等の濃厚接触者、又は無症状のSARS-CoV-2病原体保有者。
(2)原則として、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する者。
(3)SARS-CoV-2による感染症に対するワクチン接種歴を有しない者、又はワクチン接種歴を有する場合でその効果が不十分と考えられる者。
となる。(1)は、新型コロナ患者と日常生活を常時ともにする濃厚接触者や、無症状の新型コロナ患者を指し、高齢者施設や医療機関でのクラスターも対象とする。ただし、飲み会でクラスターが発生した場合は原則対象外とする。(2)により、重症化リスク因子を持つことを要件とした。
(3)では、コロナワクチンの未接種者か、ワクチンの効果が不十分と考えられる者を要件とした。厚労省は、“ワクチンの効果が不十分と考えられる者”の考え方について、例えば、がんの治療中や臓器移植後などで「免疫抑制状態にある者」がワクチンの効果が不十分と考えられる者にあたると説明。現時点では中和抗体価などで一定の基準を設ける考えはないとした。
さらに具体的な投与対象は、日本感染症学会が作成するガイドライン「COVID-19に対する薬物治療の考え方」の改訂版の中で規定する予定で、今回の特例承認と同時期に公表される見通しだ。
予防投与は、既存の静注製剤と、今回特例承認される皮下注製剤のいずれも使用できる。
◎治療目的は点滴静注製剤で やむを得ない場合に皮下注の検討を
ロナプリーブは現在、治療目的で、軽症・中等症の新型コロナ患者に対し、静脈内投与で使用する。今回追加される皮下注製剤も治療目的で使用できるが、臨床試験データが限られていることなどから、治療目的での使用は点滴静注製剤を優先する旨を添付文書に記載することになった。
厚労省によると、ロナプリーブの「用法・用量に関連する注意事項」で、「治療の場合は点滴静注で投与すること。ただし、点滴静注での投与が実施できず、やむを得ない場合にのみ、皮下注射による投与を検討する」との旨を記載する。やむを得ない場合とは、例えば、血管確保が困難な場合があたるとしている。
◎皮下投与 4箇所への注射必要
皮下注射では有効成分のカシリビマブとイムデビマブを混合せず、それぞれ2本ずつ計4本を皮下投与で用いる。注射部位は腹部、大腿部、上腕部のいずれかで、同一箇所に繰り返し投与せず、各回の注射部位から少なくとも5cm離して投与する。