管理者から薬局開設者等に対する意見申述がなされ、記録されるなど体制整備がなされている薬局は、89.8％－。日本保険薬局協会(NPhA)のコンプライアンス委員会は10月14日の定例会見で、会員薬局を対象に実施した調査結果を発表した。偽造品流通問題や調剤報酬の付け替え請求問題など、薬機法違反が相次いで発覚したことを踏まえ、薬機法改正では薬局のガバナンス強化が問われた。薬機法改正では、責任役員が新たに位置づけられたが、責任役員の権限や分掌する業務・組織の範囲を明確に定め、社内に周知しているのは89.8％だった。NPhAの首藤正一会長は、「本来は100％にならないといけないものだ。根気強く会員に周知していかなければならない」と述べ、好事例の横展開などで「不祥事が一切なくなる団体を目指す」と強調した。

不正が起きた背景として、管理者による意見申述が適切に行われていないことや、役員による管理者任せなどの実態が指摘されており、薬機法改正で薬局のガバナンス強化の必要性が打ち出された。これを踏まえ、今年６月には厚労省から「薬局開設者及び医薬品の販売業者の法令遵守に関するガイドライン」が発出されている。

調査では、ガイドラインなど法令遵守の現状を把握、課題抽出し、現状の体制を見直す機会としてもらうことなどを目的に実施した。調査期間は2021年９月９日～27日までで、Webで調査を行い、118社、１万952薬局から回答を得た。

◎管理者専任基準も各社方針を参考に　

管理者からの意見申述についてはガイドラインで、薬局開設者に明確に示すとともに書面で行うことが求められている。体制整備がされていると回答した薬局は89.8％だった。管理者からの意見を踏まえて法令遵守のために講じた措置の内容などを記録し適切に保存している薬局は87.3％、措置の必要性について検討する会議体の設置や責任役人の明示など、社内での体制を定めている薬局は91.5％だった。

管理者については責務を十分果たせるよう、「原則としては、薬局における実務経験が少なくとも５年あり、中立的かつ公共性のある団体（公益社団法人薬剤師認定制度認証機構等）により認証を受けた制度又はそれらと同等の制度に基づいて認定された薬剤師であることが重要」とガイドラインでは位置づけられている。管理者の専任で基準を定めていると回答したのは84.7％。このうち、「実務経験５年以上が含まれている」との回答は45.5％、「研修認定薬剤師であることが含まれている」との回答は40.9％で、規模が大きな企業ほど、選定基準に含まれていない傾向がみられた。ただ、別の調査では現状の管理薬剤師がこれらの要件を満たしている割合は約９割であることも示されている。このため、コンプライアンス委員会では、意欲や能力経験などの日頃の業務評価に基づいて選任している企業があるとしたうえで、「選任基準に関しても各社の方針をお互いに参考にすることが、法令遵守体制をより強固なものにすることにつながっていくと考える」としている。

◎法令順守の指針の継続的な発信は73.7％　内部監査・内部通報制度整備は66.1％に

一方で、責任役員についてはガイドラインでは、「責任役員が、あらゆる機会をとらえて、法令遵守を最優先した経営を行うというメッセージを発信するとともに、自ら法令遵守を徹底する姿勢を示すことが重要」とされている。調査では、「責任役員の権限や分掌する業務・組織の範囲を明確に定めて、社内に周知している」との回答は89.8％。「法令遵守のための指針を継続的に発信している」との回答は73.7％にとどまった。内部監査制度、内部通報制度を整備している企業はともに66.1％だった。このほか、教育訓練では、NPhA主催の研修のニーズが高かったとしている。

今回の調査では、規模が100薬局以上の企業からの回答率は75％以上だったが、それ以外では低い傾向もみられた。首藤会長は、上場企業や上場を目指す企業ではコンプライアンスに対する意識が高いとして、「中小までその意識を広げていきたい」とも述べた。