明治HDの決算会見延期 原因はMeiji Seikaファルマのロイヤリティー過大計上 川村社長「厳正に処分」
公開日時 2021/05/19 04:51
明治ホールディングスの川村和夫代表取締役社長CEOは5月18日の決算会見で、医薬品セグメント事業子会社のMeiji Seikaファルマの事業部の担当部長がロイヤリティー収入を過大に計上していたことが判明したと発表した。明治HDは当初、5月12日に決算発表を予定していたが、この問題の精査が必要と判断し、当日になって急遽決算発表を延期していた。川村社長は、「決算という大変重大な事柄に対して延期という事態を招いたことを大変重く受け止めている。Meiji Seikaファルマ内での厳正な処分については当然のことながら行って参りたい」と述べた。
◎わが子のように思い入れが強い製品「低評価が許容できなかった」
Meiji Seikaファルマの事業本部の担当部長が、自身の担当する製品について、海外企業との取引のなかでロイヤリティー収入を10億円過大に計上していた。期末決算に際し、会計監査人が残高確認を行うために、海外企業から残高確認書を回収したところ、決算発表前日の5月11日に相手方から送付されてきた残高確認書の金額は、Meiji Seikaファルマの経理部が把握していた金額と大きな乖離があったことで問題が発覚した。その後、直ちに担当部長に原因を確認したが、当日は海外企業に確認するとして、事実関係がわからなかったという。決算発表日である翌12日に、担当部長がロイヤリティー収入を過大に報告したことを申し出たという。過大に計上していたのは2020年度のみで、それ以前は「正常に計上されていることを確認している」(同社・塩﨑浩一郎取締役専務執行役員CFO)という。
聞き取り調査で担当部長は、「わが子のように思い入れが強い製品であり、計画していたロイヤリティーが計上されないことで製品自体が低評価となることが許容できなかった」と話しているという。上司からの指示や強い圧力について本人は明言していないという。
この問題の製品名や海外企業名については、「本件は相手先の企業には何ら落ち度がない。Meiji Seikaファルマの内部における不正の案件なので、企業名などは控えたい」として公表を控えた。同社は今後、不正が起きた背景を確認し、見抜けなかった原因を社内で検証し、専門家も含めて再発防止策を策定。管理体制を徹底する考え。
なお、正式な決算として決議、発表する前であることから、「不正経理や粉飾決算が行われたとは認識していない」(塩﨑CFO)としている。
◎新中計「感染症に資源集中」 Meiji SeikaファルマとKMバイオの一体運営推進でワクチン事業を強化
同社の医薬品事業部の2021年3月期(20年度)の売上高は5.2%減の1936億円。子会社のKMバイオロジクスが伸びたが、抗菌薬などの数量減の影響が大きかった。小林化工に委託契約を結んだ複数製品が自主回収になったが、「一定程度売上、利益に影響があったが、それほど大きな影響ではなかった」(古田純取締役専務執行役員CSO )とした。影響額は非開示。
同日は、2023年度を最終年度とする3か年の新中期経営計画も発表した。川村社長は、「強みのある感染症分野に経営資源を集中していく」との考えを示した。Meiji SeikaファルマとKMバイオロジクスの一体運営を推進し、ワクチン事業を強化する考え。研究開発の連携を強化し、スピード感をもった製品開発を行うほか、製販一体となったサプライチェーンマネジメントを図ることで収益力の最大化を目指す。計画の最終年度の23年度は売上高14.7%増の2090億円を計画する。
新型コロナに対する不活化ワクチンの開発については「順調にフェーズ1/2の試験が進んでいる」と説明した。年内にフェーズ3入りに向けてPMDAと協議を始めているとして、「一日も早い実用化に向けて精いっぱい努力する」と述べた。
【20年度の医薬品セグメントの業績(前年同期比) 21年度通期予想(前年同期比)】
売上高 1936億円(5.2%減) 1945億円(0.4%増)
営業利益 191億円(19.5%増)億円(19.7%減) 200億円(4.7%増)
親会社帰属純利益 70億円(15.8%増)80億円(13.6%増)
【20年度の主要製品国内売上高(前年同期実績)億円】
シクレスト 41(43)
ビラノア 75(72)
リフレックス 65(86)
メイアクト 29(53)
タゾピペ 61(72)
ヒト用ワクチン計 338(―)
インフルエンザHAワクチン 194(148)
先発品計 656(666)
ジェネリック計 436(486)
KMバイオロジクス
ヒト用ワクチン計 315(266)
血漿分画製剤計 75(79)
※リフレックスとメイアクトはGE含む