自民党行革本部 初診含むオンライン診療の恒久化を提言 コロナ影響の医療機関に損失補償を法律上明記
公開日時 2020/07/03 04:51
自民党行政改革推進本部（塩崎恭久本部長）は7月2日、新型コロナウイルス感染症への対応で明らかになった課題と今後の政策方針や予算についての「提言」を公表した。デジタル規制のさらなる推進では、新型コロナへの特例措置として実現した初診へのオンライン診療の適用について、「効果や課題を検証し、恒久化すべき」と明記した。一方、コロナで影響を受けた医療機関に対する補償・支援については、「感染者を受入れた医療機関に対する損失補償など経済的支援策を法律上明記すべき」と提言した。国立感染症研究所の組織の見直しにも触れた。国立国際医療研究センターに「感染症研究センター（仮称）」を設置。中長期的には感染研を独法化した上で、感染研と国立国際医療研究センターの両者を統合することも視野に入れる考えを盛り込んだ。
行革推進本部の提言は、①デジタル規制改革、②統計改革・EBPM、③大規模感染症流行時の国家ガバナンス見直し、④経済構造改革、⑤官民ファンド見直し、⑥防災体制見直し、⑦公務員制度改革、⑧国立大学法人改革－の各ワーキンググループ（ＷＧ）が集中的に議論を行い、まとめたもの。政府がまとめる骨太方針2020や政府の政策方針・予算への反映を要望している。
◎特例措置としたオンライン診療の手法は他分野でも有効
デジタル規制改革ＷＧの提言では、コロナショックで日本の脆弱性やデジタル化の遅れを露にしたと指摘。デジタル規制改革をさらに加速すべきと強調している。その筆頭に掲げられたのが、今回のコロナ対策の特例措置として実現した「オンライン診療」だ。対面診療を原則とした初診にオンライン診療を導入したが、ＷＧの提言では、「効果や課題を検討する」としながらも、「恒久化すべき」との見解を打ち出している。また、期間限定での規制改革という手法については、他分野でも有効であると考えられるとし、今後も同様のアプローチを積極的に活用すべきと提言した。
◎「一日２万件」を掲げたPCR検査の目標未達 国の司令塔機能が十分でなかった
大規模感染症流行時の国家ガバナンス見直しＷＧは、地域医療と一体となった感染症への対処として、①PCR検査等の課題と対応、②宿泊施設等への隔離措置、③医療機関に対する補償・支援－についての見解を示した。PCR検査については、政府が一日当たりの検査数の目標を「２万件」と定めたものの、目標を達成できない状況が続いたことを指摘。「このような事態は、国の司令塔機能が十分でなかったことにも起因する」としながらも、民間検査機関の位置づけが「感染症法」上で明確でなく、「公衆衛生と臨床医療の上下関係ないし縦割りの弊害の顕在化だと言える」と痛烈に批判した。その上で、医療機関や医師が必要と判断して行う、保健所の関与しないPCR検査も明確に国家としての感染症有事対応の枠組みと位置づけ、その検査に対する公費負担を行うこととすべきと強調した。さらに民間企業や団体などの自由意志に基づく検査についても、規制を課すべきでないとしている。
◎行政の要請で患者を受入れた医療機関の経営が悪化 経済支援策を法律上明記すべき
コロナ患者を受入れた医療機関への補償・支援についても提言した。感染拡大に伴い、コロナ患者を受入れた医療機関において、「感染者以外の一般患者の減少や感染防御コストの増大により、平時よりも医療収支が大幅に悪化している」と指摘した。さらに、「行政の要請に応じて感染者を受入れるほど経営が悪化するというモラルハザードを放置したままでは、今度の新興再興感染症の医療提供体制を確保することはできない」とし、「患者を受け入れた医療機関に対する損失補償など経済的支援策を法律上明記すべき」との見解を提言した。
◎感染研は独法化してNCGMと一体的ないし統合的な運用に転換
国立感染症研究所（感染研）については、中長期的には、感染研を独法化し、組織の独立性とミッションを明確にし、専門性を一層高めるとした。また感染研と国立国際医療研究センター（NCGM）を一体的ないし統合的に運用することにより、臨床と微生物学および疫学的研究との緊密な連携を推進する。そのため指示命令系統の明確化を図るとした。一方で当面は、新型ころなの第２波に備えた機能連携を強化するための第３社を含めた協議機関を設置することなども提案している。なお、NCGMに新たに設置する「感染症研究センター（仮称）」は、米CDC、独ロベルト・コッホ研究所、仏パスツール研究所など海外のカウンターパートとの国際連携を深めていくことが期待されると提言している。