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アッヴィ日本法人・フェリシアーノ社長 がんと免疫の2本柱で成長へ がん担当MR増員も

公開日時 2020/07/03 04:52
アッヴィ合同会社のジェームス・フェリシアーノ社長は7月2日、東京都内で開いた記者会見で、「がん領域とイミュノロジー(免疫)領域の2本柱を中心に、日本の患者さんと医療に貢献し、ビジネスを拡大していく」と述べた。がん領域では「血液がんのリーダーを目指す」と表明した。2019年に新規機序の抗がん剤ベネクレクスタを発売してがん領域に参入し、現在、同剤で急性骨髄性白血病(AML)の適応追加を申請中。フェリシアーノ社長は、AMLは市場が大きくアンメットメディカルニーズも高いことから、「ベネクレクスタでAML適応を取得した場合、オンコロジーの営業部隊やメディカルチームを拡大する」と述べ、がん担当MRを社内外から募る考えを示した。

■オンライン面談やウェブセミナー「機能している」

フェリシアーノ社長は、新型コロナ禍の中での医薬品の情報提供・収集活動の経験から、「日本でもMR活動は今までと同じではなくなる。病院の廊下で待っていることはなくなり、活動は変わると思う」との認識を示した。オンラインでの面談や電子メールでのやり取り、ウェブセミナーといったデジタルツールが活用できることがわかり、「これらが機能していることもわかった」と話した。そして、MRはFace to Faceのアポイントを取ることよりも、医師の関心事を知り、求められる情報提供チャネルを知る活動に力点が移り、デジタルツールをより活用していくことになるとの見方を示した。

また、「(成功の)カギは、我々に言うべきことがちゃんとあるかどうかということ。例えばhead to headの試験データは先生方も知りたいと思う」と述べ、現在、日本も参加している80の臨床試験がデジタルを用いた情報活動で強みになると指摘した。80の試験のうち、40ががん関係、33が免疫関係となる。豊富な国内開発パイプラインから、MR総数も「大きくはないが、増やしていく」と語った。

■ベネクレクスタ、スキリージ、リンヴォックなど5製品が成長ドライバー

フェリシアーノ社長は15年に日本法人の社長に就任し、翌年の16年から5か年計画「5-Year Focus」をスタートさせた。19年は売上1245億円、前年比28%減だったが、この減収は17年発売のC型肝炎治療薬マヴィレットによる疾患の根治に伴い、19年はC型肝炎市場自体が縮小したことが主因となる。フェリシアーノ社長は、19年は2年連続で売上1000億円超を達成し、19年売上を5か年計画初年度の16年比でみると49%増になるとして、「ビジネスは大きく成長した」と強調した。

国内事業は自己免疫疾患治療薬ヒュミラやRSウイルス感染症薬シナジスをベースにしつつ、16年以降の成長ドライバーは、▽抗パーキンソン病薬デュオドーパ(16年発売)▽マヴィレット(17年発売)▽慢性リンパ性白血病治療薬ベネクレクスタ(19年発売)▽乾癬治療薬スキリージ(19年発売)▽抗リウマチ薬リンヴォック(20年発売)――の5製品となる。19年に血液がん領域に参入し、近年は自己免疫疾患領域のポートフォリオが拡充したことがわかる。

ベネクレクスタは、アポトーシス(がん細胞の自然死や自己破壊)の過程を阻止するBCL-2タンパク質を標的とし、がん細胞により失われたアポトーシスの過程を回復させる国内初のBCL-2阻害薬。6月にAMLの適応追加を申請したほか、多発性骨髄腫でフェーズ3を実施している。フェリシアーノ社長は、「がん領域では、血液がんと固形がん合わせて13を超える新規品目の迅速な開発を進める」とした。

免疫領域では現在11の適応を持つヒュミラとともに、ヒト化抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤・スキリージやJAK阻害薬・リンヴォックでそれぞれ炎症性腸疾患などの適応追加の開発を進め、価値最大化を図る。ヒュミラには年内にも1番手のバイオ後続品(BS)が登場する見込み。この影響についてフェリシアーノ社長は、「BSは低分子の後発品と違い、科学が多くの決断に寄与する」と指摘し、ヒュミラで長期にわたって培った安全性プロファイルや実臨床データをもとにプロモーションを続ける意向を示した。

■抗TNF抗体とステロイドの抗体薬物複合体を開発

西庄功一・開発本部長は会見で、アダリムマブ(製品名:ヒュミラ)に新規ステロイドを結合させた抗体薬物複合体(ADC)をグローバルで開発中であることを明らかにした。西庄氏は、「抗TNF抗体とステロイドをADCで組み合わせることによって、炎症組織でのみステロイドの効果を発現する。ステロイドの全身性の副作用を著しく軽減させながら、高い治療効果が得られると期待している」と説明した。

2剤を同時に開発中で、POC試験まで終了したのが「ABBV-3373」(開発コード)、その改良品が「ABBV-154」(同)になるという。西庄氏によると、ABBV-3373は関節リウマチでグローバル開発中で、POCの結果を受けてこのほど、リウマチ疾患領域だけでなく、皮膚科領域(化膿性汗腺炎)や消化器領域(クローン病、潰瘍性大腸炎)に広げて開発することが決定した。ABBV-154では日本人被験者が組み入れられたと説明した。

ADCは抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤で、がん領域で多く開発されている。がん領域では、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞に直接届けることで、薬物の全身暴露を抑えつつ、がん細胞への攻撃力を高める。
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