レムデシビル 中等症の新型コロナ入院患者に5日投与上乗せで臨床症状を有意に改善
公開日時 2020/06/03 04:52
中等症の新型コロナウイルス感染症の入院患者に対し、標準治療にレムデシビル(日本製品名:ベクルリー)5日投与を上乗せしたところ、標準治療に比べ、投与開始11日目の臨床状態を有意に改善した―。ギリアド・サイエンシズは6月1日(米国時間)、第3相臨床試験「SIMPLE」プログラムの中等症患者を対象とした結果を公表した。一方で、10日投与群では標準治療に対して改善の傾向を示すにとどまり、有意差は認められなかった。
試験は、中等症の新型コロナウイルス感染症の入院患者に対し、標準治療にレムデシビルを上乗せすることの有効性・安全性を検証することを目的に実施された。対象は新型コロナウイルス感染が確定し、肺炎があるものの酸素飽和度の低下を認めない患者で、①レムデシビル5日投与+標準治療群191例、②レムデシビル10日投与+標準治療群193例、③標準治療群200例―のにわけ、有効性、安全性を検討した。主要評価項目は、投与11日目に臨床状態の改善がみられた患者の割合。臨床状態は、退院や人工呼吸器の使用、死亡など7段階のスケールで評価した。
◎投与開始11日後 臨床症状の改善の割合 5日投与上乗せで標準治療より65%高く
主要評価項目に据えた、投与開始11日目に臨床状態の改善が認められた割合は、レムデシビル5日投与群で標準治療群よりも65%有意に高かった(オッズ比:1.65、95%CI:1.09-2.48、p=0.017)。一方で、レムデシビル10日投与群では標準治療との有意差はみられなかった(OR:1.31、95%CI:0.88-1.95、P=0.18)。
7段階スケールで1段階以上の改善が認められたのは、レムデシビル5日投与群で76%(146例)、10日投与群で70%(135例)だったのに対し、標準治療群では66%(132例)で、5日投与群は標準治療群に比べ、有意な改善を示した(p=0.026)。7段階スケールで2段階以上の改善は、レムデシビル5日投与群で70%(134例)、10日投与群で65%(126例)、標準治療群では61%(121例)だった。
一方、死亡はレムデジビル5日投与群0%(0例)、10日投与群1%(2例)、標準治療群2%(4例)だった。7段階スケールで1段階以上悪化したのは、5日投与群3%(6例)、10日投与群6%(12例)、標準治療群11%(22例)で、有意差は認められなかった。
◎重篤な有害事象は5日投与群で5%、10日投与群で4%に発生
重篤な有害事象は、5日投与群で5%(8例)、10日投与群で4%(7例)、標準治療群で9%(18例)だった。レムデシビル投与群で発生率が5%以上だった有害事象は、悪心(5日投与群:10%、10日投与群:9%、標準治療群:3%)、下痢(5%、5%、7%)、頭痛(5%、5%、3%)だった。
同社のマーダッド・パーシーチーフ・メディカル・オフィサーは、同試験の結果を踏まえ、「疾患のより早い段階での治療介入や重篤例に対する他の治療法との併用療法を検討するほか、小児対象の臨床試験、多剤形の開発なども進めていきたい」とコメントしている。
なお、同試験についてギリアドは、拡大フェーズを設けており、中等症の患者を最大1000人追加登録。数か月以内に拡大フェーズの結果が得られる見通しとしている。
同剤は米国では緊急使用許可を得ているが、エビデンスが明らかになるまでの一時的な措置に位置付けられており、承認はされていない。一方、国内では米国での緊急使用許可を踏まえ、「SARS-CoV-2による感染症」の効能効果で特例承認されており、世界で唯一、現段階で同剤を承認している。