キッセイ薬品 新中計「PEGASUS」発表 希少疾病4開発品で収益モデル確立へ
公開日時 2020/05/13 04:50
キッセイ薬品は5月12日、新中期5か年経営計画「PEGASUS」を発表した。これまで業績を支えた排尿障害改善薬・ユリーフの特許切れによる市場環境などの変化を踏まえ、当初22年3月までの中期経営計画を前倒しして終了。このタイミングで新中期経営計画のスタートに踏み切った。電話会議で記者会見に臨んだ竹花泰雄経営企画部長は、「社内外の環境変化を踏まえ、持続的な成長を実現させる」と強調。経営環境の変化に対応し、新中期経営計画を推進することで経営基盤を強化し、企業価値の向上を図りたいと意欲をみせた。
新中期経営計画では、連結売上高を19年度実績632億円から、最終年度の24年度に870億円超に伸長させる目標を掲げる。主力の医薬品事業は、19年度実績の413億円を24年度に625億円超を目指す方針だ。これを実現する基本戦略では、過活動膀胱治療薬ベオーバや高リン酸血症治療薬ピートル、糖尿病治療薬グルベスなどの成長に期待を寄せる。
◎5年間で6製品 国内上市へ 2022年度以降の収益に期待
開発プロジェクトでは、今後5年間で6製品を国内に上市・申請する計画を立てている。このうち4製品が希少疾病領域の製品。具体的なパイプラインとしては、▽ロバチレリン/KPS-0373 (脊髄小脳変性症)、▽アバコパン/CCX168 (顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症)、▽ホスタマチニブ/R788 (慢性特発性血小板減少性紫斑病)、▽カロテグラストメチル/AJM300 (潰瘍性大腸炎)-。いずれも新中期経営計画の期間中に承認申請し、上市・育成までの青写真を描いている。いずれも2022年度以降に同社の収益に貢献すると期待している。
一方、新中期経営計画の後期ステージのプロジェクトでは、▽ジフェリケファリン/MR13A9 (透析患者におけるそう痒症)、▽CG0070 (高リスク筋層非浸潤性膀胱上皮内がん)—の2製品の開発を推進するとした。
このほか海外では、スイスのオブシーバ社に導出したGnRHアンタゴニスト・リンザゴリクスが、欧州では2020年末頃、米国では2021年第1四半期に、子宮筋腫の適応で承認申請される予定となっている。
◎19年度決算 医薬品事業は16.6%減収 主力品・ユリーフの後発品発売の影響で
同社の2020年3月期決算は、医薬品事業の売上高は前年度と比べ16.6%減の513億800万円だった。過活動膀胱治療薬・ベオーバや、高リン血症治療薬・ピートルなどが伸びたものの、主力品の排尿障害改善薬・ユリーフの売上が前期比67.1%減の58億円となったことが響いた。ユリーフは、18年12月に特許が満了。第一三共エスファが製造販売元であるオーソライズド・ジェネリック(AG)が19年3月に上市。同社は製造を担っている。20年6月には後発品が上市されていた。
◎MR体制「増減は考えていない」 インターネット利用した情報提供活動が普及も
MR体制について竹花経営企画部長は、「増減については検討していない」と述べたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大をきっかけに、インターネットを利用した情報提供活動が普及すると予想。医療環境や市場の変化も踏まえた上で、「今後のパイプラインに即したプロモーション体制やMR数を考えていくことになる」と述べた。
【19年度連結業績(前年同期比) 20年度予想(前年同期比)】
売上高632億3400万円(12.5%減) 655億円(3.6%増)
営業利益18億5700万円(70.1%減) △46億円(—)
経常利益24億2900万円(66.1%減) △33億円(—)
親会社帰属純利益28億1700万円(48.6%減) 31億円(10%増)
【19年度の主要製品売上(前年同期実績) 20年度予想、億円】
ベオーバ 31(7)59
ユリーフ 58(178)37
ピートル 57(48)66
エポエチンアルファBS注JCR 55(60)35
ダルベポエチンアルファBS注JCR 8(—)27
グルべス 45(44)47
グルファスト 14(16)11
サラジェン 16(16)15
レクタブル 7(6)8
ベザトール 13(17)11
注)1億円未満切捨て