インド政府 原薬24種類の輸出制限解除 日本への空輸は見通し立たず
公開日時 2020/04/09 04:53
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、インド政府が輸出制限をしていた原薬・製剤26種類のうち、解熱鎮痛薬のアセトアミノフェンを除く24種類の制限を4月8日までに解除した。ただ、インド政府は3月25日からロックダウンを行っており、国内の物流が正常に動いておらず、原薬の輸出にも大きく影響が出ている。現在のところ国内の医薬品供給への影響は限定的だが、現在国内への原薬の輸出は「ほぼ停止」している状況にあるという。長期化することで、国内の医薬品安定供給への影響が懸念されている。
インド政府は3月3日、26種類の原薬・製剤の輸出制限に踏み切った。具体的には、抗菌薬のクロラムフェニコール、エリスロマイシン、ネオマイシン、クリンダマイシン、オルニダゾール、抗ウイルス薬のアシクロビル。抗原虫薬のチニダゾールとメトロニダゾール、ビタミンB1、B6、B12や、ホルモン製剤のプロゲステロン、抗ウイルス薬・アシクロビル。アセトアミノフェンを除くこれらの原薬、製品について、インド政府は4月6日付で通知を発出し、制限を解除している。
ニューヨークタイムズ紙は、制限解除の背景には米国からインド政府へのプレッシャーがあったと報じている。なお、米・ドナルド・トランプ大統領がインドのナレンドラ・モディ首相と電話会談し、新型コロナウイルス感染症への有効性が報告されているマラリア治療薬ヒドロクロロキンの輸出を迫り、同剤の輸出制限も政治的なパワーで解除された。
◎インド国内の物流停滞 GE薬協は政府に要請
一方で、国内での原薬確保には依然として課題が残る。海外からの原薬の輸送は航空機による空輸が大半で、定期旅客便が過半数を占めている。インド政府は3月22日から国際旅客便の運航を暫定的に4月14日まで停止させており、現在のところ事実上、日本には原薬が供給されていない状況にある。また、3月25日からインド全土で3週間のロックダウンを断行しており、物流を含む様々なインフラが遮断されている。医薬品製造業はこの措置の対象外だが、インド国内の物流の停滞がさらにこの状況に拍車をかけることが懸念される。
こうした状況に危機感を示すのが日本ジェネリック製薬協会だ。協会は4月6日付で、「インドで製造される医薬品原薬の確保について」と題するペーパーをまとめ、政府に働きかけを行っている。このなかでは、航空機を含めた物流の重要性を強調。「インドにおける原薬の供給と対外輸出が円滑に行える」ことを要望している。海外にも同様の動きがある。カナダジェネリック医薬品協会は3月30日付で、ジャスティン・トルドー首相宛てに要望書を提出。航空輸送能力を高めることを求め、アジア主要目的地への航空便を計画することや、軍事機が必須医薬品や中間体の輸送にかかわること、さらには海洋港で医薬品を優先的な免荷とすることなどを提言している。
なお、ジェネリック医薬品は医療用医薬品全体で約55%を占め、原薬のうち約55%は海外からの輸入が占めている。世界有数の原薬供給国であるインドは、「我が国への原薬輸出でも大きな位置を占めている」という。