愛媛大・大日本住友 マラリアワクチン実用化へ GHITが約5億円出資
公開日時 2020/04/06 04:50
愛媛大学プロテオサイエンスセンターと大日本住友製薬は4月3日、大阪市内で記者会見を開き、米国PATHと共同で進めている「新規マラリア伝搬阻止ワクチンの前臨床開発プロジェクト」が公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)の助成案件に選定されたと発表した。約5億円が交付されるという。試験期間は2年間の計画で、今月中にも前臨床試験をスタートさせる。同日の会見で、同社ワクチン担当の福島晃久シニアフェローは、「少なくとも10年以内に上市にもっていきたい」と意気込んだ。
プロジェクトの対象となるのは、愛媛大学と PATH によって見出された新規熱帯熱マラリア抗原(Pfs230D1+)と、大日本住友製薬が持つ新規ワクチンアジュバント(TLR7 アジュバント:DSP-0546E)で構成されるマラリア伝搬阻止ワクチン候補製剤。Pfs230D1+には、強い免疫原性と高い安定性があるほか、製造効率がいいという特徴がある。また製剤化TLR7アゴニストのDSP-0546Eは、持続的な免疫誘導と高い安全性を兼ね備えているという。
◎「世界初のマラリア伝搬阻止ワクチン」の可能性も
同日の会見で福島シニアフェロ―は、ワクチンを接種し、人工吸血装置を用いて伝播阻止効果を測定したところ、「抗体が機能的に働き、ほぼ100%阻止できた」と説明。「上市されれば、世界初のマラリア伝搬阻止ワクチンとなる可能性がある」と意義を強調した。
プロジェクトでは、PATHが代表を務め、プロジェクト全体を管理し、抗原タンパク質の提供や前臨床試験、治験申請業務を担う。愛媛大学が、免疫原性など同剤が誘導する抗体の機能評価を行い、大日本住友製薬は、アジュバント製剤の開発や非臨床評価を担当する。プロジェクトの終了後に、3者で米国での臨床試験に着手する予定だ。
マラリアは、蚊が媒介して毎年約2億人が感染し、子どもを中心に約40万人が死亡している感染症だが、未だ実用化されたワクチンは存在しない。ただ、採算性に乏しいことから、製薬企業がワクチンや治療薬の開発に重点的な投資配分を行うのは難しいとの指摘がある。愛媛大と大日本住友製薬は19年にも、マラリアワクチンへの実用化が期待できる抗原「PfRipr5」を発見したと発表。非臨床試験を実施するプロジェクトに対し、GHIT Fundから約9300万円の助成金の交付を受けている。