安倍首相 新型コロナ治療薬の開発加速へ「リーダーシップを発揮する」 米国と連携
公開日時 2020/03/16 04:50
世界で感染の拡大が続く、新型コロナウイルス感染症をめぐり、安倍晋三首相は3月14日、会見に臨み、米・トランプ大統領との電話会談で、「治療薬などの研究開発で緊密に協力していくことで一致した」と述べた。新型コロナウイルス感染症について、有効性・安全性の確立された治療薬やワクチンは現時点では存在せず、対処療法を行っている状況にある。安倍首相は、「そのことが世界的な不安の最大の原因」と指摘。「日本だけでなく、米国や欧州、さらにはWHOも含めて、世界の英知を結集することで治療薬などの開発を一気に加速したい。日本としてリーダーシップを発揮する」と述べた。
新型コロナウイルス感染症の治療薬をめぐっては、ギリアド・サイエンシズが抗ウイルス薬・レムデシビルについて2本の国際臨床第3相試験を開始することを発表。武田薬品も免疫グロブリン製剤の年内上市を目指している。また、ワクチン開発についても、グラクソ・スミスクライン(GSK)や田辺三菱製薬のカナダ子会社やアンジェスなど、複数の企業が開発に着手している状況にある。また、アッヴィ合同会社の抗HIV薬・カレトラ(一般名:ロピナビル・リトナビル配合剤)、富士フィルム富山化学の新型インフルエンザ治療薬・アビガン(一般名:ファビピラビル)、抗喘息治療薬のオルベスコ(一般名:シクレソニド、国内の製造販売元:帝人)などについて、有効性を示す症例報告があがっている。
◎感染拡大防止に注力
ただ、有効性・安全性を確認し、上市するまでには時間がかかる。安倍首相は、「いま、私たちにできることは、まず感染の爆発的な拡大を抑えること」と強調。感染爆発による医療崩壊を避けるためにも、重症者が適切な治療を受けることのできる医療提供体制を地域で維持する重要性にも言及した。「感染のピークをできるだけ後ろに遅らせることで、治療薬などが開発されるまでの時間稼ぎが可能になる」とも述べた。
◎PCR検査 3月中にも1日に8000件の実施を可能に クラスターの早期発見へ
重症化を防ぐために、「検査や医療の支援を集中」する必要性も強調。PCR検査が1日あたり6000件超実施できる体制を整えたことや、短時間で検査を可能にする簡易検査機器の一部が3月中にも利用可能になることを説明した。そのうえで、3月中にも1日あたり8000件の検査を可能とする体制を構築すると強調。検査の活用により、「いわゆるクラスターと呼ばれる集団による感染の早期発見・早期対応に努めるとともに、患者の早期診断につなげ、重症化予防に取り組む」と述べた。
なお、厚労省が15日に公表した感染者のクラスターの全国分布図によると、5人以上の感染者が確認されたクラスターは、北海道や大阪府のライブハウスなど、10都道府県、15か所(15日12時時点)にのぼっっている。
◎現時点では「緊急事態を宣言する状況ではない」
会見の前日3月13日には、新型コロナウイルスを「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の対象に加える改正案が成立した。蔓延の恐れが高いと判断した際に、首相が緊急事態宣言をし、都道府県知事が外出の自粛や学校の休校などの要請や指示を行うことができるようになる。
安倍首相は、国内の感染者数が1万人当たり0.06人と、中国や韓国、イタリアなどの欧州、中東よりも少ないと説明。「現時点では緊急事態を宣言する状況ではない」との見解を示した。そのうえで、「政府と自治体が一体となって懸命に感染拡大防止策を講じている。そのうえで、あくまで万が一のための備えをする。そのための法律だ」と述べ、国民に理解を求めた。