社保審医療保険部会 「薬剤自己負担引上げ」で議論スタート 保険償還率の設定など諸外国事例も参考に議論
公開日時 2020/02/03 04:52
社会保障審議会医療保険部会は1月31日、「薬剤自己負担の引上げ」を含めた医療保険制度改革の議論をスタートさせた。政府が昨年12月に決定した「新経済・財政再生計画 改革工程表2019」では、「薬剤の種類に応じた保険償還率や一定額までの全額自己負担」など諸外国の薬剤自己負担の仕組みを参考に、20年6月の骨太方針取りまとめに向けて関係審議会で検討する方針が明示されていた。この日の医療保険部会では、OTC類似薬の保険償還率や、フォーミュラリに関する意見が出席委員から出された。
政府の「全世代型社会保障検討会議」が昨年末に中間報告を取りまとめたことを受け、社保審医療保険部会として議論を進め、今夏までに意見を取りまとめる。政府の改革工程表の指摘事項も議論の俎上にのせ、委員から意見を求める。
全世代型社会保障の社会保障検討会議では、“受診時定額負担”として、他の医療機関からの文書による紹介がない患者が外来受診した際の初・再診の定額負担(初診時5000円、再診時2500円以上)を200床以上に拡大することが盛り込まれた。この日の社保審医療保険部会では、受診時に一律にワンコインの定額負担を求める施策の再考を求める声も委員からあがったが、厚労省側は、「一律にという考えは持っていない」と説明し、全世代型社会保障検討会議での議論の延長線上での議論を行う方針を明確にした。
◎改革工程表 保険償還率の設定や一定額までの全額自己負担なども議論の俎上に
一方で、医薬品の自己負担の在り方については、社保審医療保険部会で議論する方針を明確に打ち出した。全世代型社会保障検討会議では、“OTC類似薬の給付範囲の見直し”が議題にあがったが、最終的に全世代型社会保障検討会議の中間報告に盛り込むことは見送られた経緯がある。
ただ、政府の改革工程表では、「市販品と医療用医薬品との間の価格バランスを、医薬品適正使用の促進等を踏まえつつ、対象範囲を含め幅広い観点から、引き続き関係審議会において検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずる」と明記されており、この観点から議論が進められることになる。
改革工程表では議論に際し、「諸外国の薬剤自己負担の仕組み(薬剤の種類に応じた保険償還率の設定や、一定額までの全額自己負担など)」を参考に議論することとされている。
この日の議論では、薬剤の自己負担引き上げをめぐり、「市販品類似薬の除外や償還率の変更を検討すべき」(佐野雅宏委員・健康保険組合連合会副会長)、「OTC化された市販品類似薬は保険償還率の変更、保険適用の除外など大胆な見直しをすべき」(安藤伸樹委員・全国健康保険協会理事長)、「小さなリスクは自助で、薬剤の給付範囲を見直すなどの検討を」(藤井隆太委員・日本商工会議所社会保障専門委員会委員)など、保険者を中心に見直しを求める声があがった。
◎フォーミュラリに議論集中 保険者側は導入に意欲も医療団体代表は反発
この日、議論が集中したのが、フォーミュラリだ。佐野委員(健保連副会長)が「診療報酬改定では見送られたが、診療報酬制度化するためのフォーミュラリ―を引き続き検討すべき」と口火を切った。これに続き、安藤委員(全国健康保険協会理事長)も、「医薬品のフォーミュラリは経済性だけでなく医師の負担軽減や病院経営の効率化につながる。協会けんぽとしても、全国的に広がることを期待している。診療報酬では時期尚早となったが、厚労省で実施体制や実施方法などの実態把握や分析を行った上で、標準的な実施方法のガイドラインの策定などに早急に取り組んでほしい」と述べた。
一方で、松原謙二委員(日本医師会副会長)は患者の状況が異なることや、リスクの比較的低い人を対象に治験が行われていることを説明。こうしたなかで、「副作用がなるべく起きたりしないように、腎臓か肝臓で代謝されるのか。家族でどのようにサポートできるのか食事は誰が作っているのかまで考えて、医師はどれが一番適切な薬剤か考えている」と述べた。学会の策定するガイドラインも参考にしていることも説明し、経済原則だけでは成り立たない医療現場の実状に現場を求めた。
池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は、「地域フォーミュラリ―になってしまえばパターン化することが当たり前になってしまうと患者にも医療資源にも影響する。かえって無駄な医療をする可能性もある。もっと慎重な議論、調査が必要だ」と述べた。
このほか、森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「全世代型社会保障検討会議でなかったが、ポスト80%時代をどうするのかはずっと考えていかないといけない」と述べ、後発品80%達成後の施策をいかに描くかを議論する必要性も指摘した。