中医協 20年度改定を諮問 フォーミュラリの導入見送り 骨太実現への道のり霞む
公開日時 2020/01/16 04:52
加藤勝信厚労相は1月15日、中医協の田辺国昭会長に2020年度診療報酬改定を諮問した。この日の中医協は「2020年度診療報酬改定にかかわるこれまでの議論の整理」を取りまとめた。改定項目として浮上したフォーミュラリの導入は見送られた。政府が6月に閣議決定した骨太方針にも経済性を加味した処方の推進が盛り込まれたが、厚労省は後発品やバイオシミラーの推進で対応するとの従前の対応を回答するにとどまった。支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「これをもって工程表や基本方針に対応したというのは言い過ぎではないか」と反発。厚労省が、薬剤師の職能に触れる最大の課題を次期改定以降に先送る姿勢に疑念を投げかけた。超高齢社会が到来するなかで、医療費の適正化は命題だ。骨太方針でも社会保障改革の必要性が明記されるなかで、実現への道のりが霞む内容となった。
骨太方針には、「診療報酬等について、高齢者への多剤投与対策、生活習慣病治療薬の費用面も含めた適正な処方の在り方については引き続き検討を進める」と明記されていた。改革工程表でも、「生活習慣病治療薬の費用面も含めた適正な処方の在り方について、2020年度診療報酬改定において、必要な見直しを実施≪厚生労働省≫」と明記されていた。20年度改定の基本方針にも、医師・院内薬剤師と薬局薬剤師との協働で医薬品の適正使用を推進。「医学的妥当性や経済性の視点も踏まえた処方を推進」することを盛り込んだ。
厚労省側は当初、特定機能病院での「使用ガイド付きの医薬品集」(フォーミュラリ)の評価や、生活習慣病管理指導料での投薬内容や医薬品の説明についての要件化などを議論の俎上にあげたが、日本医師会の代表委員はいずれの項目についても反対を表明していた。
骨太方針への対応について厚労省保険局医療課はこの日、後発医薬品やバイオシミラーの推進を通じ、医学的妥当性や経済性の視点を踏まえた処方を推進するとの資料を提示するにとどまった。インスリン製剤などをバイオシミラーに切り替えることでの経済効果があるとの資料を示したが、骨太方針で“生活習慣病薬”と名指しした改革を求められるなかで、苦しい説明に終始した。
幸野委員は、「改革工程表と診療報酬が1対1の対応ではないことは理解するが、まだ不足であって経済性については課題として残ると考えている」と表明。フォーミュラリについても特定機能病院で実施するのは、「至極現実的な方法だと考えていた」と語った。20年度改定は、こうした「費用対効果の高い取り組みを実施する最後のチャンスだと考えていた。次期改定においていずれも見送られたことは極めて残念だ」と述べた。
◎診療側としてフォーミュラリの評価は「根本的に反対」 薬剤師代表は発言せず
この間の中医協の議論は、昨年末の改定率の決定プロセスに代表されるように、医師の働き方を旗印に議論が進められてきた印象が強い。幸野委員は20年度改定の附帯意見にフォーミュラリ―などについて盛り込むことを求めたが、支払側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)はこれにも反発。「診療側としては根本的に反対している」と改めて反対の立場を主張した。同じ診療側委員の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、フォーミュラリを後発医薬品体制加算の施設要件として盛り込むことに一時賛意を示したがこの日、発言はなかった。
幸野委員は、すでにフォーミュラリを作成・運用している医療機関があることから、「安全性と経済性から見た効果を検証して次期改定に結び付けるべき」と改めて主張。これに対して、松本委員も「医療機関で、色々な考えに基づいて行うことは反対しない。診療報酬で評価することについて反対しているだけだ」と一歩も譲らなかった。
◎生活習慣病指導料での患者説明の要件化「現実的でない」
生活習慣病指導料での患者への説明の要件化についても、松本委員は「現実的ではない。今回の改定で行わないことは妥当」と述べた。診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)は、医薬品を調剤する保険薬局でかかる薬剤費を医療機関側が説明するのは難しいとして、要件化の難しさに理解を求めた。
厚労省は1月22日まで、20年度改定についてパブリックコメントを求め、24日に静岡県富士市で公聴会を開く。これらの意見を踏まえ、2月上・中旬を目途に答申を目指す。