抗がん剤の小児適応で「成人と同時期の開発」求める声相次ぐ 国がん・シンポ
公開日時 2020/01/14 04:50
小児適応を取得する医薬品が少ないなかで、国立がん研究センターは1月8日、都内でシンポジウムを開催し、産官学や患者会らが集い、意見を交わした。登壇者からは、治験の実施に際し、若年者が参画できるプロトコルの検討を求める声があったほか、国際共同試験(グローバル試験)へのさらなる参画を求める声が相次いだ。
◎ノバルティス・渡辺氏 小児適応取得の積極的な審査・規制求める
登壇したノバルティスファーマの渡辺葉子氏は、2017年度以降に小児の用法・用量を取得した5つの抗がん剤の審査報告書を調査した結果を発表した。慢性骨髄性白血病治療薬のタシグナは、日本が国際共同試験に含まれており、登録基準は1歳以上18未満に定められていたと説明した。
再発または難治性のB細胞性急性リンパ性白血病治療薬のビーリンサイトについては、小児の用法・用量も含めて承認を取得したことを紹介。「国内小児患者に投与可能とする用法・用量を積極的に取得し、参考になる事例だ」と述べた。
そのうえで「国内成人と同時期に国内小児開発を進めることが肝要と考えられ、小児の用法・用量の取得を積極的に支援する審査・規制体制の更なる検討を期待したい」と訴えた。
◎PMDA・野口氏 RWDの利活用などの必要性指摘
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の野口敦氏は、「最近では未承認公知ではなく、小児患者を対象に実施された臨床試験成績等に基づいて承認される薬剤も増えつつある」と指摘した。さらに小児用医薬品開発の進めていくために、▽海外小児試験結果など既存の知見の効果的な利用、▽国際共同治験への参加の促進、疾患レジストリなどデータベースの活用によるエビデンスの強化―などが必要だと訴えた。
小児の薬剤開発をめぐっては、新生児から思春期まで剤形や薬物動態、用量などが多様となり、きめ細やかな対応が要求される。一方で、対象患者が少なく、1人あたりの投与量が少ないために製薬企業にとっては採算性が低く、開発の困難性が高いという側面がある。シンポジウムはこうした現状を打開しようと開催されたもので、今回で3回目。