厚労省医薬局 ラニチジン問題 化学構造の特性から「原薬及び製剤の製造工程でNDMAが生成される可能性」に言及
公開日時 2019/10/30 03:52
厚生労働省医薬・生活衛生局は10月29日、海外でラニチジンの原薬から発がん性物質であるN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)が検出された問題で、その原因に初めて言及した。NDMAが検出された原因について、「ラニチジンの原薬及び製剤の製造過程において、亜硝酸又は亜硝酸塩の存在下でNDMAが生成される可能性がある」との見解を示した。ただ、原材料、中間体製造時の生成・混入、溶媒(再利用を含む)中への混入も想定されるとし、各国当局と協力し、調査を進めるとした。今後の対応については、健康影響についてリスク評価を行うとし、医療関係者や患者への必要な情報提供を行う方針も明示した。
ラニチジン問題をめぐって医薬安全対策課と監視指導・麻薬対策課は、同日開催した薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会で対応方針を示した。ラニチジンの原薬からNDMAが検出された原因について安対課は、「ラニチジンは、その構造中にジメチルアミノメチル基が存在する」と指摘。当該製剤の原薬や製剤の製造過程において、「亜硝酸または亜硝酸塩の存在下でNDMAが生成される可能性がある」と言及した。同省はこの問題が発覚した9月13日から4日後の9月17日に、NDMAに関する分析とその結果の報告を求める事務連絡を発出。その際も、「亜硝酸及び亜硝酸塩については、サルタン系医薬品においてNDMA等の生成の原因の一つになっている」とし、製造工程における亜硝酸または亜硝酸塩の混入リスクの有無および根拠についての報告を製造販売会社に求めていた。
◎化学構造以外の原因も想定し、引き続き調査を進める
その後の本誌の取材からも、理論上ラニチジンの化学構造から発がん性物質の発生リスクを完全に排除することができないとの見解が拡がっている。これに伴い原薬や製造過程の管理でリスク排除を徹底できないため、終売に向けた動きが拡大するのではとの見方も強まっている(
関連記事)。とは言え、この日の調査会に示した医薬安全対策課の見解は、化学構造以外の原因として、原材料や中間体製造時の生成、混入なども想定されるとし、引き続き調査を進める方針を示した。
◎「安全性が担保されていない状態で何に切り替えたらいいのか」舟越委員
ラニチジンをめぐっては、当該製剤を製造販売する製薬企業11社がいずれも自主回収を行っている。同省は今後の対応として、「服用中の患者に対しては、自己判断でラニチジン製剤の服用を中止せず、医療関係者への相談を引き続きお願いする」とした。また、製造販売業者と国立医薬品食品衛生研究所において行っているラニチジン製剤中のNDMA含有量に関する分析結果等を踏まえ、医療関係者や患者への必要な情報提供を行う考えを示した。
この日の調査会で舟越亮寛委員(亀田総合病院薬剤管理部長)は、「ほかに切り替えようとしても安全性が担保されていない状態で何に切り替えたらいいのかと現場は混乱している。他のものは問題がないのか、早く現場に情報を伝えてほしい」と訴えた。
◎インフル異常行動 医薬品服用ない場合も10件報告
このほか同日の調査会では、インフルエンザに罹患し、突然走り出す、飛び降りるなど重度の異常行動を起こしたケースについての報告も行われた。18-19シーズンでは、オセルタミビルリン酸塩(タミフルとオセルタミビル「サワイ」)14件、アセトアミノフェン(OTC含む)38件、リレンザ7件、イナビル12件、ゾフルーザ25 件、ラピアクタ0件—だった。これらの医薬品の服用がなかった場合も10件あり、「抗インフルエンザウイルス薬の種類 、使用の有無と異常行動については、特定の関係に限られるものではないと考えられる」との考えをまとめた。調査会で座長を務める五十嵐隆国立成育医療研究センター理事長は、「抗インフルエンザ薬を服用していない場合も含めて、罹患時の注意喚起を徹底することが適当だ」と述べた。
◎ロラタジン一般用医薬品への移行了承 ウロキナーゼは添文の原則禁忌削除へ
アレルギー性鼻炎治療薬などとして使われているロラタジンの一般用医薬品への移行や、持田製薬のウロナーゼ静注用(一般名:ウロキナーゼ)の添付文書中の記載の改訂についても審議し、いずれも了承した。ウロキナーゼでは現在、「瞬時完成型の神経症状を呈する患者(脳塞栓である可能性が高い。)」を原則禁忌に盛り込んでいるが、4月施行の添付文書新記載要領で「原則禁忌」が廃止されたことに伴い、記載を削除する。同剤では、「脳塞栓又はその疑いのある患者(出血性脳梗塞を起こすことがある。)」を禁忌としており、同義であると判断した。