厚労省・田宮薬剤管理官 フォーミュラリーで薬剤評価に薬剤師の積極関与求める
公開日時 2019/07/08 03:53
厚生労働省保険局医療課の田宮憲一薬剤管理官は7月7日、長崎市で開催された日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会で講演し、フォーミュラリーについて、「質と安全性の高い薬物療法を効率的に実施する観点からの採用薬の評価の実践」として、薬剤師が職能を発揮する姿を描いた。一方で、現時点では院内フォーミュラリーを策定する医療機関自体が数%にとどまっている現状を指摘。最新の診療ガイドラインや審査報告書を熟知するなど「適切な薬剤選択や適正使用に必要な専門性の向上」することで、職能を発揮するために研鑽することの重要性を指摘した。田宮薬剤管理官は、「将来に向けて薬剤師は素養を身に付けて貢献することが求められる」と強調した。
フォーミュラリーをめぐっては次期診療報酬改定の検討項目にあがっており、6月26日の中医協総会でも議論の俎上にのぼった。診療・支払各側がともに採用薬について医師、薬剤師など多職種で議論する場の意義を評価した一方で、リスト作成自体を診療報酬上で評価することには慎重意見が目立った。
◎薬剤師は医薬品評価で医師との協議プロセス構築を
この日、田宮薬剤管理官は、薬剤費が10兆円規模まで膨らむなかで、後発品の使用促進や、革新的新薬への最適使用推進ガイドラインの適応などで、薬剤費の適正化を進めてきたと説明した。一方で、医療現場では高齢化が進み、複数の診療科を受診し、ポリファーマシーに陥る患者が増えるなど、薬剤をめぐる課題は顕在化しつつある。さらに、PPIやARBでは、後発品のない先発品が薬剤料で占める割合が高い。こうしたなかで、「後発品の使用割合だけでなくその先の話をしっかりやっていく必要がある」との考えを示した。
田宮薬剤管理官はそのうえで、国内のフォーミュラリーをめぐる状況を紹介。浜松医科大学医学部付属病院や聖マリアンナ医科大学などを引き合いに、「フィロソフィーは病院によって違う。患者や専門医がどれくらいいるかで変わってくる。先駆的に取り組んでいる病院でも様々なバリエーションがあって日本のフォーミュラリーだと決めるのは難しいことがうかがわれる」と述べた。そのうえで、「薬剤師が医薬品の評価にかかわって医師などと協議して決めるというプロセスが重要だ」と強調した。
フォーミュラリーを地域に拡大することで、薬剤費の適正化だけでなく、地域包括ケアシステム時代に医療現場の課題であるポリファーマシーや残薬の解消など、医療の質向上なども期待される。田宮薬剤管理官はポリファーマシーをめぐる点数として、かかりつけ医には「薬剤総合評価調整加算・管理料」(250点)があり、18年度改定ではかかりつけ薬剤師側を評価する「服用薬剤調整支援料」(125点)が新設されたことも紹介した。
入院だけでは医療が完結しない地域包括ケアシステム時代に突入するなかで、入退院時における薬物療法についての情報を共有し、かかりつけ薬剤師と病院薬剤師、さらには多職種が連携し、地域でチーム医療を実践するようなシームレスな連携構築の重要性を強調した。
◎求められる薬剤師のスキル 適切な薬剤選択や適正使用で専門性発揮を
田宮薬剤管理官は地域包括ケアシステム時代の今後の薬剤師像として、ポリファーマシーへの積極的な取組や、入退院時の薬物療法における患者の薬物療法に関する情報提供に加え、フォーミュラリーをあげた。田宮薬剤管理官は、病院では診療科と薬剤部の連携による取り組みの積み重ねが院内フォーミュラリーの策定につながるとの見解を表明。一方、地域医師会や薬剤師会、保険者が中心となって地域フォーミュラリーを策定した場合に積極的な関与も求めた。
そのために薬剤師として医薬品を評価するスキルを向上する必要性を強調。具体的には、最新の診療ガイドラインや臨床研究論文の把握、PMDAのウエブサイトで公開されている審査報告書やRMP、厚労省の策定した「高齢者の医薬品適正使用の指針」などを列挙し、これらを熟知し、医薬品の適正使用の中心となる薬剤師の姿を描いた。
◎横浜市大附属病院薬剤部・小池氏 インスリン導入で年間120万円削減
横浜市立大学医学部付属病院薬剤部の小池博文氏は、18年3月から超即効型インスリンやPPI、消炎鎮痛剤で院内フォーミュラリーの運用を開始したことを紹介した。特に超即効型インスリンでは導入後1年効で年間120万円を削減し、第3推奨薬はほとんど投与されずに院内での採用を削除されるなどの効果をあげたことを紹介した。同種同効薬の整理につながっているなどの効果を紹介した。さらに地域へ拡大するためにはステークホルダーを説得することの重要性を強調した。