バイタルHD 21年度までの新中計 病院販路強化、医薬以外の事業にも着手
公開日時 2019/05/15 03:50
バイタルケーエスケー・ホールディングス(バイタルHD)は5月14日、2019年度から21年度までの新たな中期経営計画を明らかにした。
この日会見した村井泰介社長は、成長力ある製品が生活習慣病薬から抗がん剤や中枢神経薬、再生医療等製品などスペシャリティ領域に大きく変化したことを指摘。それら製品を多く扱う病院販路を強化し、利益を創出していく方針を示した。加えて、人口減少地域の医療・介護を支えるには効率性や効果を高める医薬以外のサービス、ソリューションの提供も必要と判断。リハビリや介護支援のロボットやAI、ICTによる診断支援なども取り入れ、「エマージングビジネス」と称して事業化すると表明した。
それらにより、中計の最終年度には売上高は19年度見込みより約200億円増の5780億円、営業利益は約34億円増の63億円を目指す。営業利益の成長のうち医薬品卸売で20億円強、エマージングで10億円程度を見込む。
地域包括ケアシステムが進む中では、医療関係者だけでなく、自治体や介護事業者などの需要にも応えるサービス、ソリューションを提供する「選ばれる企業集団」を目指す。その上で、毎年薬価改定などで国内市場の停滞が見込まれることから「低成長下でも利益を創出しつづける医療用医薬品卸売事業体制の確立」に取り組む。また。エマージングビジネスで、地域の需要に応え、収益拡大を図る。
医薬品卸売事業では、病院販路強化のため、製品ごとの部門横断的なタスクチームを設置。営業企画だけでなく、物流、調剤、情報、薬事管理の担当者がメーカーとともに、市場調査から患者管理、シェア獲得などに取り組む。他方、地域医療では、プライマリー製品の販促、流通も重要だとして、これまでの地域医療ネットワークを生かしてフィービジネスも展開する。
エマージングビジネスでは、まずはサイバーダインのロボット活用の普及支援から始める。そのほか、成長が期待できそうな新技術の紹介を外部機関から受け、グループで投資判断を行うスキームを立ち上げる。
◎18年度決算 医薬品卸売事業は27.3%の営業増益 価格改善などで
2019年3月期(18年度)決算では、医薬品卸売事業は、スペシャリティ薬の販売増があったものの、ギリアド社のC型肝炎薬の売上減少や人口減少などで売上高は前期比1.0%減の5314億円だった。営業利益は、流通改善ガイドラインに沿った価格交渉などが功を奏し27.3%増の26億3900万円となった。価格妥結率は2年前より1.6ポイント下回る97.9%だった。
20年3月期(19年度)予想は、10月に予定される消費増税に伴う薬価改定の影響などを折り込み、売上高は0.7%減の5276億円、営業利益は1.2%増の26億7000万円。会見した村井社長は、予定される10月改定や4月の通常改定が控えることから「今期が一番読みにくい」と述べた。
【連結業績(前年同期比) 19年度予想(前年同期比)】
売上高 5597億1200万円(1.0%減) 5572億円(0.4%減)
営業利益 28億2100万円(18.3%増) 28億6000万円(1.4%増)
純利益 50億8400万円(13.8%増) 51億4000万円(1.1%増)