バイエル薬品・プリンツ社長 全社的にデジタル活用推進 効率化と顧客満足度向上図る
公開日時 2018/04/27 03:51
バイエル薬品のハイケ・プリンツ社長は4月26日、東京都内で行った記者会見で、日本国内の事業環境を踏まえ「価格プレッシャーがかかる場合、組織としては効率化を図るのが筋」と述べ、研究開発から営業の全ての領域においてデジタル技術の活用を進めることで効率化を推進する姿勢を示した。その上で、医師ら顧客への情報活動について「スカイプやビデオチャットなど遠隔的なやりとりをさらに使っていく」とした。同社長は、デジタル活用について、活動の効率化だけでなく、顧客ニーズに合った情報を伝えるなど顧客満足度の向上の観点も併せて取り組んでいることを強調した。
プリンツ社長は、「デジタル技術を駆使して、全ての領域で効率化を図りたいと考えている」と話した上で、営業領域について「医師とのやり取りについては既に様々なチャネルを使って行っている。(MRによる)対面訪問は、たくさんあるチャネルの中の1つである。スカイプやビデオチャットなど遠隔的なやりとりをさらに使っていく。それを使うメリットは、顧客が都合のよい時間を選べるほか、顧客のニーズに合わせてコンテンツを伝えられる。デジタルツールは、効率化のみならず、顧客満足度を向上させることができる」と話した。
バイエル薬品は、デジタルヘルスケア領域のスタートアップ企業を助成・支援するプログラム「Grants4Apps」を進めているが、その狙いについて同社長は「ビジネスモデルもこれまでにとらわれず、『薬剤+デジタル技術』で何か生み出せないかということ」とし、長期的な観点から、新たなモデルを創出する可能性に期待を寄せた。「製薬産業は規制が非常に厳しくビジネスモデルが崩れるといった変化は他産業より長くかかるのではないかと見ている。とはいえ、我々は10年先、20年先を見越し、環境変化をいち早くキャッチし、変化に対応していこうと考えている」と説明した。
17年売上高3059億円、4.9%増 イグザレルト、アイリーアの伸長寄与
バイエル薬品は同日、2017年業績を発表し、主に経口抗凝固薬イグザレルトと加齢黄斑変性などに用いる眼科用VEGF阻害薬アイリーアの伸長が寄与し、薬価ベースの売上高は16年実績より4.9%増の3059億円と、初めて3000億円を突破した。
イグザレルトとアイリーアは3年連続で同類薬市場において売上高トップだったという。 イグザレルトの売上高は715億1400 万円(前年比11.5%増)、アイリーアは599億8600万円(同 12.9%増)だった。18年と中期的な業績見通しについては、同社長は明らかにしなかった。
18年は、同社は3月23日に深在性皮膚感染症などを適応とする新薬シベクトロ錠、同点滴静注用(テジゾリドリン酸エステル)の承認を取得。4月23日には、小腸からのコレステロールの吸収を阻害するゼチーア錠のエゼチミブと、コレステロールの生合成を阻害するアトルバスタチンを配合したアトーゼット配合錠を発売した。ほか、17年10月に血友病A治療薬として承認申請した、半減期延長型の遺伝子組換え第8因子製剤「BAY94-9027」(一般名:ダモクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組換え))の承認が見込まれる。そのほかの申請予定の有無については開示しなかった。
なお、会見では、武田薬品によるシャイアー社の買収提案をどう見ているのかと質問があったが、他社のことだとしてコメントしなかった。
【主な製品の17年売上(薬価ベース:IQVIA】
イグザレルト(選択的直接作用型第Xa因子阻害薬)715億1400 万円(11.5%増)
アイリーア(眼科用VEGF阻害薬)599億8600万円(12.9%増)
ゼチーア(高脂血症治療薬)319億7400万円(3.7%増)
ホスレノール(高リン血症治療薬)286億4500万円(1.4%増)
イオパミロン(非イオン性尿路・血管造影剤)171億4000万円(4.6%減)
ネクサバール(抗がん剤/キナーゼ阻害薬)129億3700万円(6.4%減)
アダラート(高血圧・狭心症治療薬)111億8900万円(14.7%減)
ヤーズ(経口黄体ホルモン・卵胞ホルモン混合月経困難症治療薬)71億1200万円(8.7%増)
コージネイト(遺伝子組換え型血液凝固第VIII因子製剤)70億4200万円(38.0%減)
バイアスピリン(抗血小板薬)63億0100万円(3.2%減)