厚労省 臨床研究法施行規則を都道府県に通知 企業主導も責任は研究責任医師に
公開日時 2018/03/02 03:51
厚生労働省は2月28日、臨床研究法が4月1日に施行されるのを踏まえ、臨床研究法施行規則を公布し、関連通知を都道府県宛に発出した。通知では、製薬企業などが提案する臨床研究であっても、責任の主体は研究責任医師であることを明記した。モニタリングや監査、契約などについても原則として研究責任医師の責任となる。臨床研究の対象者の安全性を確保し、社会的・学術的に意義のある質の高い臨床研究の実施を促す。
ARB・ディオバンの臨床研究不正をきっかけに策定に至った臨床研究法がいよいよ施行されることになる。施行規則では、臨床研究法の基本理念として、「社会的及び学術的意義を有する臨床研究を実施すること」を掲げ、臨床研究の質を向上し、透明性を確保することを目指す。
製薬企業等から資金提供を受けて実施される自社製品を対象とした場合や、未承認・適応外の医薬品については、”特定臨床研究”と位置づけ、モニタリングや監査の実施、利益相反の管理など実施基準の遵守、インフォームド・コンセントの取得、個人情報の保護、記録の保存などを義務付けた。プロトコルなどについては、認定臨床研究審査委員会の審査を踏まえ、必要に応じて修正することなどを求める。
◎モニタリングや監査も原則として研究責任医師が実施
通知では、モニタリングや監査、資金提供以外の契約についても、「原則として研究責任医師が行う」とし、製薬企業が実施することを禁止した。製薬企業などが提案する、いわゆる企業主導臨床研究で製薬企業などがモニタリング・監査を実施する場合でも、「研究責任医師の責任の下で委託し、研究責任医師の監督のもと実施する」ことを求めた。また研究計画書や説明同意文書に記載し、研究結果公表時に開示することも求めた。研究資金などの提供にかかわる契約については、実施医療機関の管理者、研究の管理団体など、研究責任医師でなくとも差し支えないとした。研究の管理を行う財団など経由する場合は、実施医療機関と製薬企業との三者契約も認める。ただし、責任は研究責任医師が負い、必ず内容を確認するここととした。
規則や研究計画書、手順書などの不遵守および研究データの改ざん、ねつ造があったことを研究責任医師が知った場合は、速やかに病院長などの実施医療機関の管理者への報告を求めた。
公平性を求められる臨床研究審査委員会は、医学医術に関する学術団体、一般社団法人、一般財団法人、特定非営利法人が設置する場合、「公益事業または特定非営利活動に係る事業として行われるべきもので、収益事業として行われるべきではない」と明記。定款などで、公益事業または特定非営利事業に係る事業と明記することを求めた。製薬企業などからの賛助金(物品の贈与、便宜供与等を含む)については、「認定臨床研究審査委員会における審査業務の公正かつ適正な遂行に影響が及ばないと一般的に認められる範囲にとどめる」ことを求めた。審査意見業務については、製薬企業と雇用関係があるなど、特定臨床研究に関与する製薬企業などと密接な関係がある人の参加も禁じた。
◎利益相反はインターネットでの公表求める 閲覧申請のみ、印刷禁止を認めず
製薬企業には、▽研究資金等(研究の管理等を行う団体が実施医療機関に提供した研究資金等を含む)、▽寄附金(実施期間終了後2年以内に研究責任医師が所属する機関に提供されたものを含む)、▽原稿執筆・講演報酬―などについて、公表を求めた。公表に際しては、実施医療機関の確認を求めた。研究資金については、研究資金を管理する財団や、臨床研究の支援や受託、複数の実施医療機関の事務を統括管理する団体も含まれる。2018年10月以降に開始する毎事業年度終了後1年以内に、事業年度ごとに公表する。公表はインターネットの利用とし、閲覧申請を行った場合のみの閲覧や印刷を禁止するなど閲覧しにくい方法は透明性確保の観点から認めない。
日本製薬工業協会(製薬協)の透明性ガイドラインなどに基づいた公表も認めたが、法に基づく情報のみを閲覧できるよう、研究責任医師の氏名など必要な情報を公表した上で、検索できるように仕組みを整備することを求めた。