医薬品開発支援を行うLSIメディエンス、国立がん研究センター、医薬基盤・健康・栄養研究所は２月21日、日本人がん患者の腫瘍組織を持つモデルマウスのライブラリーを整備する事業を3月1日から開始すると発表した。臨床試験前に候補薬物の効果予測を高め、新規抗がん剤の研究の効率化を図る。対象は肺がん、大腸がん、乳がん、胃がん、子宮がん、前立腺がん、膵がん、希少がんで、創薬につなげたい考え。

 

日本医療研究開発機構（AMED）の「医療研究開発革新基盤創成事業」に採択されたもので、20年５月31日まで行う予定。ライブラリーを整備するのは、がん患者の腫瘍組織を免疫不全マウスに移植する「PDX」（患者腫瘍移植）と呼ばれるもの。発表によると、PDXモデルマウスは元の組織特性を失わないまま腫瘍を再現できるという。そのため、臨床試験前の薬物の効果予測では、従来の実験モデルでは５%程度といわれるが、今回ライブラリーを整備するPDXモデルマウスでは80%以上という報告があるとしている。

 

そこで世界最高品質のライブラリーを整備、使用基準などを作成した上で、GLP施設で非臨床試験が実施できるようにする。この事業と並行して、、国がんは製薬企業と連携し、がん患者と今回のPDXモデルマウスの薬剤応答性データ等を突合・解析する 試験、希少がんの創薬研究を実施する。

 

PDXの樹立・品質保証、維持には多額の費用が必要で、一企業での対応が困難なため、国レベルの体制整備が求められていたという。そこでGLP施設を擁し、今回のPDXの取り扱い実績があるLSIメディエンス、重度複合免疫不全マウスを用いて多種多様なPDXの樹立に成功した実績と最先端創薬技術を有する基盤研、日本最大のがん専門研究所を擁する国立がん研究センターの３者が協力して取り組むことになった。