厚労省は11月28日、MRIに用いるガドリニウム造影剤について、脳組織にガドリニウムが残存することを確認したとして、同剤による「検査の必要性を慎重に判断すること」との注意喚起を添付文書に盛り込むことを日本製薬団体連合会に通知で指示した。線状型の製剤が残存しやすいとして、線状型の添付文書には「環状型ガドニウム造影剤の使用が適切でない場合に投与すること」と明記し、環状型の製剤を第一選択とした(肝造影に用いるガドキセト酸ナトリウムは除く)。残存により具体的な副作用は報告されていないとして、予防的措置として注意喚起することになった。
ガドリニウム造影剤は、2014年以降、動物実験や人での使用経験から脳組織にガドリニウムが残存することが文献などで報告され、欧米でも規制の動きがある。それらを踏まえ医薬品医療機器総合機構が、日本での安全対策について調査。その報告を受けた厚労省の薬食審・医薬品等安全対策部会安全対策調査会が11月9日、ガドリニウムが残存しやすいという線状型は医療現場で必要となる場合もあるほか、線状型を一時販売停止とする措置を行うだけの危険性に関する根拠は十分とはいえないとして、ガドリニウム造影剤の添付文書の改訂による注意喚起が適切と判断していた。
ガドリニウム造影剤は以下のとおり。
▽オムニスキャン静注32%、同静注32%シリンジ 他(ガドジアミド水和物、第一三共 他)
▽マグネビスト静注、同静注シリンジ 他(ガドペンテト酸メグルミン、バイエル薬品 他)
指示内容:「効能・効果に関連する使用上の注意」を新設し、以下追記。
「ガドリニウム造影剤を複数回投与した患者において、非造影T1強調MR画像上、小脳歯状核、淡蒼球等に高信号が認められたとの報告や脳の剖検組織からガドリニウムが検出されたとの報告があるので、ガドリニウム造影剤を用いた検査の必要性を慎重に判断すること」
「本剤を含む線状型ガドリニウム造影剤は、環状型ガドリニウム造影剤より脳にガドリニウムが多く残存するとの報告があるので、本剤は環状型ガドリニウム造影剤の使用が適切でない場合に投与すること」
薬効分類:729 その他の診断用薬
▽EOB・プリモビスト注シリンジ(ガドキセト酸ナトリウム、バイエル薬品)
▽プロハンス静注、同静注シリンジ(ガドテリドール、ブラッコ・エーザイ)
▽マグネスコープ静注38%シリンジ(ガドテル酸メグルミン、ゲルベ・ジャパン)
▽ガドビスト静注1.0 mol /Lシリンジ(ガドブトロール、バイエル薬品)
指示内容:「効能・効果に関連する使用上の注意」を新設し、以下追記。
「ガドリニウム造影剤を複数回投与した患者において、非造影T1強調MR画像上、小脳歯状核、淡蒼球等に高信号が認められたとの報告や脳の剖検組織からガドリニウムが検出されたとの報告があるので、ガドリニウム造影剤を用いた検査の必要性を慎重に判断すること」
薬効分類:729 その他の診断用薬
クロザリル錠 重大な副作用に「胸膜炎」
そのほか28日には、統合失調症に用いるクロザリル錠(ノバルティスファーマ)の「重大な副作用」として「胸膜炎」を追記するよう添付文書の改訂を指示した。
▽クロザリル錠(クロザピン、ノバルティスファーマ)
指示概要:「重大な副作用」に「胸膜炎」を追記。
過去3年の国内報告数(因果関係が否定できない例数):1例(死亡例なし)
薬効分類:117 精神神経用剤