日薬連・製薬協両会長名で声明 緊急薬価改定「ルール逸脱、二度とあってはならない」
公開日時 2016/11/17 03:51
日薬連の多田正世会長と製薬協の畑中好彦会長は11月16日、この日午前の中医協総会で抗がん剤・オプジーボの緊急薬価引き下げが決まったことを受け、両会長連名の声明を発表した。声明では、「今回の措置は、薬価改定がない時期に、企業公表の売上予測を活用して薬価を引き下げるという、現行ルールを大きく逸脱したものであり、今後二度とあってはならない」と強調している。
今回の緊急薬価改定の背景には、社会保障費の自然増6400億円を5000億円程度に抑制したい財務省と官邸の意向が強く働いたと言える。政府は、その差額分1400億円を穴埋めするための財源措置として、昨年12月に閣議決定した「経済・財政再生計画改革工程表」に示された医療保険制度関係の改革7項目の実現や、高額薬剤オプジーボの薬価臨時引下げをリストアップした。ところが、与党内から高齢者の負担増につながる施策の実現に抵抗感が示されるなど、改革7項目をめぐる議論が一気に停滞する。その間、オプジーボの薬価引き下げ幅も、当初25%に収める空気が政府部内に流れたもの、官邸の一声でさらに薬価の下げ幅を深堀する方向が強まり、16日の中医協総会に厚労省が示した通り、現行ルールの特例拡大再算定を適用し、その最大下げ幅となる50%の緊急薬価引き下げを2017年2月1日に実施すると決定した。
◎薬価毎年改定「あってはならない」と牽制
日薬連と製薬協連名の声明によると、「薬価の改定は、通常2年に1回、薬価調査に基づく実勢価をベースに、定められたルールに基づき行われている」と強調。今回の緊急薬価改定がこれまでルールから逸脱したものであることを強く非難した。そのうえで、製薬業界が強く反対を求めているにも関わらず、財政審や経済財政諮問会議で遡上にあがる薬価毎年改定について、「今回の措置が毎年改定の契機になるようなことがあってはならない」と牽制した。
◎日本発の革新的新薬に対する期中改定は「研究開発意欲削ぐ」
オプジーボのような革新的新薬が今回標的にされたことにも触れ、「薬価制度におけるイノベーションの評価は極めて重要である」と指摘。「今回の日本発の革新的新薬に対する期中での大幅な薬価引き下げという措置は、日本における新薬の研究開発意欲を削ぐことにつながる恐れがあり、ドラッグ・ラグを招くことにもなりかねない」とした。さらに「製薬企業は革新的な新薬の創出に向けて、高いリスクを伴う研究開発投資を長期間にわたり継続する必要がある。予見性の高い薬価制度の運用が重要である。2018年度薬価制度改革に向けた議論は非常に重要と認識しており、業界としても積極的に参画していく所存である」と強調した。