政府・未来投資会議ワーキングが論点 AI、IoTの活用を診療報酬で評価 製薬企業のビッグデータ利活用に道
公開日時 2016/10/21 03:52
政府の未来投資会議・構造改革徹底推進会合のテーマ別ワーキング「医療・介護-生活者の暮らしを豊かに」(翁百合会長)の初会合が10月20日に開かれ、人工知能(AI)、IoT(Internet of Things) 、ビッグデータなど革新的技術の医療・介護分野における利活用について議論を開始した。この日は翁会長から論点が示され、AIやIoTの導入を前提とした診療報酬体系の整備や、病院等の人員・施設基準の見直しを次期2018年度診療報酬改定に向けて議論すべきとの考えが示された。さらにビッグデータを利活用した新薬開発など、製薬企業を含めた産業界へのデータの活用に道を開く環境整備も論点に盛り込まれた。
未来投資会議は、これまでの「産業競争力会議」と、「設備投資促進の官民対話」の機能を集約・一本化したもの。議長は安倍晋三首相が務める。会議の最終報告は来年6月に閣議決定する予定の成長戦略に反映される。
翁会長が示した医療分野の論点は、①IoT、AI等の革新的技術の活用による医療の質の高度化、②データ利活用等に関する様々な取り組みの検証、③技術革新の活用についての医療現場のニーズと、現在の診療報酬体系や人員・施設基準の関係の検討―など。
この日は厚労、経産、総務、内閣官房の各省からICT化に関する取り組み状況が報告された。厚労省は、400床以上の一般病院における電子カルテの普及率を2020年度までに90%(14年度実績で78%)まで高めるほか、病院・診療所間の患者情報の共有や、医学研究のデータ管理などに利用可能な「医療等ID」を18年度から段階的に運用を開始させ、20年度には本格導入する方向を示した。このほか技術革新に伴う診療報酬上の評価として、16年度から診療情報提供時の画像情報等の電子的な提供・活用についての評価を開始したと説明した。
◎診療報酬上の評価は「大切な問題」
これに対し出席者からは、「AIによる診療支援や、IoTを活用した遠隔診療など、技術進歩を診療報酬点数でどう評価するかは大切な問題だ」との意見が見られ、同時に現行の医療施設における人員配置や施設基準についても革新的技術の導入に見合う議論を行うべきとの声があがった。
◎MID-NET 18年度中に300万人規模に拡充、製薬企業へのデータ提供も開始
一方、データの利活用についても論点にあがった。実診療情報に基づくビッグデータが今後集積されることから、その利用目的と収集データの範囲や内容の検討を行うとした。具体的には、ビッグデータを活用した創薬や、個別化された最適な医療・健康サービスの提供、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)による健康管理、医薬品の費用対効果や医療の質の評価など医療政策への応用など。これを実現するためのデータのデジタル化や書き込み方式の統一化、さらにはデータを提供する医療者や医療機関側がメリットを実感できる仕組みの構築などが求められた。
厚労省としては、ナショナルデータベース(NDB)、DPCデータ、介護保険総合データベース、MID-NET(医療情報データベース)のそれぞれについて整備・拡充を進めると説明。このうちPMDAに設置したMID-NETについては、18年度中に利用可能なデータを300万人規模に拡充するほか、製薬企業や研究機関等へのデータ提供も実施する方針を示した。