ギリアド・サイエンシズの折原祐治代表取締役社長は10月13日、本誌インタビューに応じ、「行政や保険者も含めて色々なステークホルダーに啓もうしていく活動に、もっと力を入れていかないといけないと考えている」と決意を示した。2015年に発売を開始したＣ型肝炎治療薬・ソバルディ錠、ハーボニー配合錠は、上市後垂直的な立ち上がりを見せたが、2016年度薬価改定で31.65％という大きな引下げを受けた。折原社長は、両剤は有効性が高いだけでなく、“治癒”、さらにはＣ型肝炎の撲滅まで視野に入る特殊な医薬品、疾患であるとの見方を示した。日本人患者の実臨床データが構築される中で、患者や行政、保険者などのステークホルダーとの対話に重点を置く姿勢を強調。疾患や製剤について理解を深めてもらい、医薬品としての“価値”を理解してもらうことに注力する考えを示した。


ソバルディ錠、ハーボニー配合錠は、発売後一気にブロックバスターになった一方、上市後一年にも満たない段階で、特例拡大再算定の対象となり、例を見ない大幅な薬価引下げを受けた。2016年度に試行的導入された費用対効果評価の対象品目にも指定された。折原社長は、「弊社にいる社員も含めて初体験。業界が初体験ではないか。今でもとまどっている部分がある」と率直に語った。


折原社長は、両剤が単に“よく効く”だけでなく、奏効率100％の成績を治験で叩き出した“治癒”をも可能にする薬剤であることを強調。患者が治癒することで、患者数も減少する特殊な疾患領域でもある。「極端に言えば弊社しかメッセージを出せない。特殊環境下における弊社のメッセージをどう出したら大多数の方に理解していただけるのか。なかなか難しい」と述べた。その上で、「（両剤の登場を待ち望んでいた患者に一定程度行き届き）大きな最初の患者のうねりが終わり、７月頃から実臨床のデータが出てきた」と述べた。実臨床でも治験と同様に高い有効性・安全性を示すデータが構築され始めていることから、今後企業としてのメッセージ発信に注力する考えを示した。


◎疾患、製剤の特性に応じた議論を　


高額薬剤問題が取り沙汰される中で、「高額薬剤イコール悪者とか、それはよくないという部分があるとすれば、それは違うと言いたい。ひとつひとつの疾患、薬剤について理解することが必須条件だ」と述べ、高額薬剤の中でも疾患や製剤の特性に応じた議論を求めた。


折原社長は、「治癒というと外科的な切除だが、飲み薬でウイルスが陰性化してしまう。そういう意味で違うという啓もうを十分にやってこなかった。一企業としては啓もうを積極的に早く働き掛ける必要があった」と振り返り、患者や患者家族、保険者、政策・制度決定者、医療提供者といったステークホルダーに対して積極的に疾患啓もうを行うことの必要性を強調。現状については、疾患や製剤の理解に基づいて「バリューをバランスよく満足するためのルール作りは何かという議論になってきた」との見方も示した。


折原社長は、イノベーションの適切な評価と持続可能な医療の両立を目指すことの重要性を強調。「メーカーからみると、薬価は最後の一つの見え方に過ぎない。待ち望んでいる患者に対して、どのように治療し、治癒、QOL（生活の質）を確保したかが、企業としてのゴールだ」と述べた。その上で、「それと国の予算やサステナビリティーを両立させければならない。その両立させる、落とし所がどこかにあるはずだと考えている」と述べた。


◎Ｃ型肝炎撲滅に向けて集中投資


今後も、「徹底的に日本からもC型肝炎患者をなくそうということで、直接作用型抗ウイルス薬（DAA）でカバーできていない患者、非代償性の患者さんの開発に投資していく」ことも表明。現在、▽ジェノタイプ３型（ソバルディ錠の適応拡大）、▽リバビリンが使えないジェノタイプ２型の患者に対するリバビリン・フリーの治療（ハーボニー配合錠の適応拡大）、▽DAA治療不成功（ソフォスブビル／ベルパタスビルの開発）、▽非代償性肝硬変（ソフォスブビル／ベルパタスビルの開発）--などが開発中だ。折原社長は、「日本は先進国の中で、”Ｃ型肝炎のない明日”が来る非が一番近い国だと考えている」と述べ、Ｃ型肝炎撲滅に向けて会社をあげて取り組む姿勢を強調した。

インタビューの全文は、Ｍｏｎｔｈｌｙミクス11月号（こちら）に掲載します。