16年度診療報酬改定 7対1要件厳格化で機能分化迫られる急性期病院
公開日時 2016/02/15 03:50
「厚労省の資料に基づいて試算すると、最大でも1万床くらいしか影響を受けないのではないか」。中医協支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は危機感をあらわにした。2016年度診療報酬改定で焦点となったのが、7対1入院基本料の厳格化だ。重症度、医療看護必要度、在宅復帰率が見直され、重症患者割合25%以上、在宅復帰率を80%以上に引き上げられた。一方で、10対1入院基本料は重症患者が24%以上の場合は手厚い配分を行うほか、地域包括ケア病棟では、手術や麻酔を包括範囲から除外した。7対1病床から10対1病床への移行を推進するために、病棟群単位の届け出も認めた。7対1入院基本料算定要件の見直しで、特に200床未満の急性期病院にとっては、10対1や地域包括ケア病棟への転換を迫られることになりそうだ。一方で、すでに7対1堅持に走る医療機関も少なくないとの見方が広まっている。
7対1病棟の重症患者割合は、従来の15%から25%以上に引き上げられた。ただし、許可病床数200床未満の病院では2018年3月31日までの2年間、23%以上に緩和される。ただ、医療・看護必要度の基準そのものがより重症患者を反映する指標とするよう見直さている。A項目(モニタリングおよび処置等)、B項目(患者の状況等)に加え、C項目(手術等の医学的状況)を新設。基準も、「A項目2点以上、B項目3点以上」に「A項目3点以上またはC項目1点以上」が追加された。A項目には、無菌治療室での治療、救急搬送後の患者(2日間)を追加。B項目では、起き上がり、座位保持を削除し、新たに、「危険行動」、「診療・療養上の指示が通じる」を追加する。C項目(これまでM項目として議論)としては、開頭の手術、開腹の手術、救命等に係る内科的処置(2日間)などが含まれる。特定の診療科などで手術件数が多い医療機関ではクリアできるとの見方もあるが、比較的算定が容易だったB項目の項目が見直されたことで、クリアは難しいとの声があがっている。
7対1入院基本料から10対1入院基本料への移行を後押しするとみられていたのが病棟群単位の届け出だ。2016年4月から2年間、病棟群単位で持つことが可能になる。つまり、1つの病院に7対1病棟と10対1病棟が存在することを認めたわけだが、2017年4月1日以降は、7対1病床は60%以下にしなければならないと条件が付いた。そのため、当初予想されていたほど、10対1への移行が進まないとの見方もある。一方で、地域包括ケア病棟は手術・麻酔が包括範囲から除外されており、中小病院などでは7対1から地域包括ケア病棟への転換を進める医療機関も少なくないとみられている。
一方で、特定集中治療室とハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度も見直された。特定集中治療室等の重症度の見直しでは、A項目の「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」の3項目にのみ該当する場合は重症度の基準を満たさないこととした。一方で、B項目に「食事摂取」や「危険行為」などの項目を追加し、せん妄や認知症の患者などを評価する。基準を厳格化した一方で、患者の割合は引き下げた。ただ、特定集中治療室の中でもがんなどの術後の救急を受け入れている医療機関や、7対1の堅持が難しい医療機関では、ICUやHCUを廃止し、7対1を堅持する医療機関も出るとの声も出ている。