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田辺三菱 バイオシミラー参入のレミケード 「大きな営業努力」で売上維持を計画

公開日時 2015/05/11 03:52

田辺三菱製薬は5月8日、2015年3月期(14年度)決算を発表し、国内医療用医薬品売上は3239億円、前期比5.2%の減収だった。14年4月の薬価改定で市場拡大再算定が適用されて薬価が10.9%下がった生物学的製剤レミケードの減収や、ジェネリックのより一層の市場浸透に伴う長期収載品の減収などを、新薬群の増収でカバーできなかった。また、レミケードには14年11月末にバイオシミラー(バイオ後続品)が参入したが、レミケードの15年度売上計画は14年度とほぼ横ばいの707億円に設定、バイオシミラーによる影響を「かなり大きな営業努力」(村上誠一営業本部長)で吸収する。

14年度の国内医療用医薬品売上は、レミケードや抗リウマチ薬シンポニー、DPP-4阻害薬テネリア、抗うつ薬レクサプロなど重点10品目で計249億円の増収となったが、▽薬価改定の影響で290億円減▽長期収載品等で132億円減▽ジェネリックなどを手掛ける田辺製薬販売で5億円減――となり、差し引き178億円の減収となった。最主力品のレミケードは売上706億円で前期比7.5%減だったが、「売上数量は伸ばした」としている。

なお、14年度連結業績は売上4151億円(0.6%増)、営業利益671億円(13.6%増)だった。ノバルティスに導出した多発性硬化症治療薬ジレニア、ヤンセンに導出したSGLT2阻害薬インヴォカナ/インヴォカメットによるロイヤリティ収入が計500億円を超えたことが業績全体に大きく寄与した。

■レミケードとシンポニー 売上合計で1000億円突破目指す

国内医療用医薬品の15年度計画では、リウマチの適応を持つレミケード及びシンポニーの合計で、薬価ベースで売上1000億円突破を目標にする。皮下注製剤のシンポニーを成長ドライバーにし、点滴静注製剤のレミケードはリウマチに対する第一選択薬率を維持する。レミケードは適応を持つ炎症性腸疾患領域で新規処方獲得にも注力する。

村上営業本部長はこの日の決算会見で、レミケードのバイオシミラー参入の影響について、「今後の国の政策等を含めてどのように動くかわからないが、侮った形では考えていない」「(15年度のレミケード売上目標は)かなり大きな営業努力をしないと、この数字は達せられないだろうと考えている」と話した。レミケードは全社挙げて取り組む製品で、豊富なエビデンスとこれまでに培った専門知識・治療提案を武器に、新規処方をどれだけ伸ばせるかが目標達成のカギとなりそうだ。

注力領域のひとつである糖尿病領域では、テネリアは引き続き、▽高齢者に最も使いやすいDPP-4阻害薬とのポジショニングの獲得▽新規採用軒数の拡大――に取り組む。共同販売会社の第一三共との合算で、15年度は薬価ベースで売上270億円(14年度174億円)を目標にする。SGLT2阻害薬カナグルは、5月開催予定の日本糖尿病学会年次学術集会と10月の長期投与制限解除を処方拡大のきっかけにしたい考え。三津家正之社長は会見で、「(SGLT2阻害薬は)安全性への懸念から、(処方に)消極的な医師と積極的な医師の二極化状態になっている」との認識を示した上で、同学術集会でSGLT2阻害薬に関するパネルディスカッションが行われる予定であることに触れながら、「日本人に対してSGLT2阻害薬がどのように使われていくべきかということの本格的な議論が行われることを期待している」と述べた。

ただ、15年度の国内医療用医薬品売上は2946億円、前期比9%減を計画している。これは日本血液製剤機構との血漿分画製剤の販売提携が14年度末で終了したことや、ジェネリックの影響拡大が主な理由。長期収載品等として181億円の減収を織り込んだ。

■糖尿病領域 「医師によって処方意向違う」 対応できるMRを育成

同社は研究開発、国内営業、米国展開、組織・行動――の4つの改革に取り組んでおり、国内営業改革では▽事業提携品の拡大▽MR営業力の強化▽新製品の価値を最大化する仕組みの確立――が改革の3本柱。このうちMR営業力の強化では、領域専門担当者の強化、治療提案型情報提供のスキル向上、エリア管理の強化に取り組む。

三津家社長は会見で、同社MRの営業力や期待する役割について、これまでレミケードや脳梗塞急性期治療薬ラジカットなど「非常に特徴ある製品」を手掛けてきたことで、同社MRは「製品の専門知識というところでは、相当に戦えるMRではないかと思う」と述べた。しかし、今後より注力していく糖尿病領域やCNS領域では、「医師によって処方意向が全然違う」とし、「医師1人ひとりのニーズをどのように捉え、どのように医師が必要としている情報を提供できるかという部分と、最後の数字に落とし込む力強さの部分の2つを当社は相当磨いていかないといけない」と問題意識を示した。個々の顧客ニーズを把握でき、的確な対応ができ、結果として処方・売上につなげられるMRを育成していく必要性を示した格好だ。

また、国が進めている地域完結型の医療・介護提供体制である「地域包括ケア」への対応にも触れ、「地域のいろいろな連携の中でMRがどのような活動をしていけば真に意味あるMRになっていけるのか。具体論を持っているわけではないが、日本の今後の方向性として、しっかり考えていかないといけない」と語った。

【14年度連結業績(前年同期比) 15年度予想(前年同期比)】
売上高4151億2400万円(0.6%増) 3960億円(4.6%減)
営業利益671億3300万円(13.6%増) 675億円(0.5%増)
経常利益676億5400万円(9.3%増) 670億円(1.0%減)
純利益395億200万円(13.0%減) 405億円(2.5%増)

【14年度の主要製品国内売上(前年同期実績) 15年度予想、億円】
レミケード 706(763)707
タリオン 160(137)171
セレジスト 157(178)141
メインテート 141(155)132
ヴェノグロブリンIH 116(111)-
シンポニー 105(94)133
クレメジン 105(126)93
ウルソ 100(124)88
アンプラーグ 83(112)58
デパス 81(98)68
レクサプロ 80(65)105
ラジカット 74(109)54
テネリア 62(8)96
ヘルベッサー 55(69)45
タナトリル 46(62)36
ワクチン計 303(284)269
内テトラビック 75(67)71
内インフルエンザ 74(72)79
内水痘ワクチン 72(36)44
田辺製薬販売取扱品(ジェネリックなど) 136(141)144

【その他】
ロイヤリティ収入等 604(376)702
内ジレニア ロイヤリティ 439(322)非開示
内インヴォカナ ロイヤリティ 98(非開示)非開示
 

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