追跡研究:高齢者の医療事故
公開日時 2014/09/18 03:50
米国では高齢患者の5人に1人が医療事故を経験しているといわれる。投薬ミス、医療機器の操作ミス、必要な治療がなされなかったなど、高齢者に多い医療事故の原因は本来の治療に関係がない場合がほとんどだ。事故の2/3は入院病棟ではなく外来治療施設(医師の診察室、日帰り手術センター、ER、療養施設など)でおきている。高齢者の医療事故の患者への影響を、オンライン版の”Injury Prevention” 誌に掲載された8年間の追跡調査が明らかにした。
http://injuryprevention.bmj.com/content/early/2014/04/21/injuryprev-2013-041043.abstract?sid=a04b6ca1-615d-41d8-af0c-47151fd371c9
研究は、Towson UniversityのMary Carter, MD, Ph.D.等老年医学研究者によって実施された、平均年齢76歳の12,500人の患者の1998年から2005年までのメディケア診療報酬請求書を分析したもの。
研究の結果、対象患者の19%が何らかの医療事故を経験していることが明らかになり、従来ほぼ定説とされてきた事故率13.5%を書き換える結果であった。事故の62%は外来治療中におこっている。女性よりも男性が事故を経験しやすく、また慢性疾患のある患者や障害のある患者は医療事故を経験しやすいこともわかった。慢性疾患が複数の場合、疾患が1つふえるごとに事故リスクは27%も上昇する。年齢もリスクファクターで、年齢が1ヶ月上がると事故リスクが1%上昇することも明らかになった。追跡研究により医療事故を経験した患者の死亡率はしなかった患者の2倍以上高いことも明らかになっている。
医療事故は医療費を押し上げる大きな要因と指摘されてきたが、本研究で、医療事故は、事故の直後の医療費だけでなく、事故を経験した患者の予後の医療費を高くすることが明らかになっている。米国ではビッグデータの公開が進むにつれ、精緻な実証研究が次々と発表されている。医療事故研究では、次なる課題は事故原因の追求そして事故削減→無事故に向けての対策づくりである。