ノバルティス 2500例の因果関係の否定できない重篤な有害事象で報告遅延
公開日時 2014/09/01 03:50
ノバルティスファーマは、MRなどが自社製品に関連する有害事象を把握しながらも約1万例で報告遅延が起きていた問題で8月29日、因果関係の否定できない重篤な有害事象が2579例あったと発表した。因果関係など評価中の6118例と併せた8697例を医薬品医療機器総合機構(PMDA)、厚労省に報告したという。同日付で、厚労大臣に改善計画書を提出した。副作用報告の遅延をめぐっては、7月31日付で、厚労省から薬事法に基づく業務改善命令を出されており、8月末までに改善計画書の提出とともに副作用報告遅延をめぐる社内調査結果の報告が求められていた。
薬事法違反があったのは、慢性骨髄性白血病治療薬・グリベック(一般名:イマチニブ)、タシグナ(ニロチニブ)をめぐり実施された、▽慢性骨髄性白血病治療薬に関するQOLアンケート調査(KIZUKIプロジェクト)、▽東京医科大医学部附属病院に事務局を置くTokyo STI study Group (TSSG) が実施した1研究―。報告義務のある副作用を把握していたにもかかわらず、定められた期限内に報告していなかったほか、複数のMRが副作用情報を同社の安全管理統括部門に伝えていなかった。業務改善命令では、▽社内の全MRから安全管理統括部門に確実に報告される体制をとり、そのための教育訓練を実施すること、▽知りえたすべての有害事象などの収集情報についてもMRが安全管理統括部門に報告すべき対象であることを明確にすること―などが求められていた。
◎有害事象報告義務達成状況 人事評価項目の指標に
改善計画書では原因として、▽有害事象に関するトレーニングを受けていたにも関わらず、MR が知り得た全ての有害事象を報告することの重要性を十分に認識していなかった、▽営業所長および営業部長を含む営業部門の管理者の監視が十分ではなかった―ことを挙げた。その上でこの傾向が「がん領域で顕著にみられた」とした。また、安全管理統括部門への有害事象を報告していないケースを検出する上で、効果的なシステム、プロセスも存在しなかったとした。
その上で、業務改善として命じられた「社内の全MRから安全管理統括部門に確実に報告される体制をとり、そのための教育訓練を実施すること」としては、▽再発防止のための体制整備、▽是正措置としての教育研修――を明記した。
体制整備では、▽GVP 上の安全管理実施責任者である治療領域別の営業部長に対し、8月22日付で厳重注意を発令し、再発防止に向けた社員への教育などの対策に万全を期すよう指示、▽MR の人事評価項目に有害事象の報告義務達成状況を指標として加え、今年下期(7 ~12 月)の評価から適用、▽営業部門における業務報告システムの改善、▽スイス本社の監査部門による体制についての監査、営業本部以外の部署による第三者による点検、▽本社・安全管理統括部門、薬事・品質保証部門がコンプライアンス部門と協調し、各営業所を来年から順次訪問し、MRと直接対話する――を挙げた。
教育研修では、医師主導臨床研究に関する社内ルールの徹底と社内風土の改善を目的に集合研修として実施された特別研修の中で再度研修するなどして周知を図ってきたとした。
社内調査実施後の4 月以降の有害事象の安全管理統括部門への報告症例数が約 40%増加したことも報告し、研修の成果が上がっているとした。
今後は、7月~来年1月までの6か月間を1クールとしたビデオ配信による有害事象の月例教育プログラムも実施する。7月、8月は安全管理統括部門へ報告すべき情報の詳細など有害事象報告の基本を学ぶ。9~12月は、講演会の資料やアンケート調査結果などの具体的な情報源を想定するなど、具体事例を交えた研修を行い、さらなる意識の浸透を図る。また、10 月にはグローバルで共通の教育プログラムを e-learning にて社員全員に受講させ、テストによる理解度チェックを行い、合格者をシステム内で管理するとした。
「知りえたすべての有害事象などの収集情報についてもMRが安全管理統括部門に報告すべき対象であることを明確にすること」については、安全性情報収集の手順を示したGVP に関する業務手順書の中に、情報ソースによらず、知りえたすべての有害事象が報告対象となることを明記した。