厚労省の中医協・総会は8月27日、新薬22成分33品目を薬価収載することを決めた。同省は9月2日に収載する予定。 インターフェロン(IFN)を要さず経口薬の併用で高率にウイルスを除去できるC型肝炎治療薬が国内初登場し、併用薬剤の一つである抗ウイルス薬ダクルインザ錠(ブリストル・マイヤーズ)が、IFN不適格未治療患者または同不耐容患者に効果を示すなど、治療法の改善が見られるとして40%の有用性加算が認められた。また、悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬オプシーボ点滴静注(小野薬品)は他に類薬がないため原価計算方式で算定、効果と新しい治療選択肢を提示したことが評価され、60%の加算となった。ほか、5成分目となるSGLT2阻害薬カナグル錠(田辺三菱製薬)も収載の運びとなった。
収載が決まった製品は以下のとおり(カッコ内は成分名と薬科収載希望会社)
▽ダクルインザ錠60mg(ダクラタスビル塩酸塩、ブリストル・マイヤーズ)
効能・効果:「セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるインターフェロンを含む治療法に不適格の未治療あるいは不耐容の患者またはインターフェロンを含む治療法で無効となった患者のウイルス血症の改善」
薬価:1錠9186.00円(1日薬価:9186.00円)
市場予測(ピーク時2年後):投与患者数1.7万人、販売金額222億円
40%加算(有用性加算1):加算理由「新規の臨床上有用な作用機序を有すると認められる。また、標準治療であるインターフェロン治療に不適格未治療/不耐容患者に対して有効性を示したこと、経口投与のみによる治療を可能とし、インターフェロン療法で一部の患者に必要とされている投与初期の入院等も必須ではないこと等から、治療方法の改善が客観的に示されていると認められる。」
同時に薬価収載されるスンベプラカプセルと併用する。1日1回24週間経口投与する。
▽スンベプラカプセル100mg(アスナプレビル、ブリストル・マイヤーズ)
効能・効果:「セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるインターフェロンを含む治療法に不適格の未治療あるいは不耐容の患者またはインターフェロンを含む治療法で無効となった患者のウイルス血症の改善」
薬価:1カプセル3280.70円(1日薬価:6561.40円)
市場予測(ピーク時2年後):投与患者数1.7万人、販売金額159億円
加算なし
同時に薬価収載されるダクルインザ錠と併用する。1日2回24週間経口投与する
▽カナグル錠100mg(カナグリフロジン水和物、田辺三菱製薬)
効能・効果:「2型糖尿病」
薬価:1錠205.50円(1日薬価:205.50円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数72万人、販売金額460億円
加算なし
腎臓の近位尿細管で糖を再吸収するナトリウムグルコース共輸送担体2(SGLT2)を選択的に阻害し、過剰な血糖を体外に排出する。田辺三菱製薬と第一三共が共同販売する。
▽アレセンサカプセル20mg、同40mg(アレクチニブ塩酸塩、中外製薬)
効能・効果:「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」
薬価:1カプセル
20mg901.70円
40mg1763.90円(1日薬価:2万6458.50円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数1.5千人、販売金額213億円
10%加算(有用性加算2):加算理由「分子的診断による理論的根拠に基づいた薬剤であり、国内臨床試験において高い奏効率を示していること、クリゾチニブ不応例に対しても高い奏効率を示していることから、治療方法の改善が認められる。」
肺がんの国内罹患数10万人弱のうち非小細胞肺がんは8割、ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)陽性率は2~5%とされ、推定患者数は1600~3900人となる。同じ適応を有するザーコリ(クリゾチニブ、ファイザー)が12年に承認されている。
▽ザイティガ錠250mg(アビラテロン酢酸エステル、ヤンセンファーマ):効能・効果:「去勢抵抗性前立腺がん」
薬価:1錠3690.90円(1日薬価:1万4763.60円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数7.5千人、販売金額370億円
加算なし
男性ホルモンであるアンドロゲンの合成酵素の1つCYP17を阻害する。アンドロゲン合成を阻害し、アンドロゲン受容体の活性化を抑制することで、腫瘍の増殖を抑える。プレドニゾロンとの併用する。同じ適応の薬剤としては、イクスタンジ(エンザルタミド、アステラス製薬)がある。
▽ジャカビ錠5mg(ルキソリチニブリン酸塩、ノバルティス ファーマ)
効能・効果:「骨髄線維症」
薬価:1錠3706.80円(原価計算方式)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数1.6千人、販売金額100億円
加算なし
▽シダトレンスギ花粉舌下液200JAU/mLボトル、同舌下液2000JAU/mLボトル、同舌下液2000JAU/mLパック(標準化スギ花粉エキス原液10000JAU/mL、鳥居薬品)
効能・効果:「スギ花粉症(減感作療法)」
薬価:
200JAU/mL 10mL1瓶421.10円
2000JAU/mL 10mL1瓶1006.60円
2000JAU/mL 1mL1包100.80円
(原価計算方式)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数127千人、販売金額30億円
加算なし
減感作療法を目的とした皮下注薬はあるが、舌下液は初承認。スギ花粉から抽出したエキスの舌下液剤。原因アレルゲンを直接舌下に滴下することで、アレルゲンに対する過敏性を減少させる。舌下液の治験では、2シーズンにわたり毎日投与することにより鼻症状の有意な低下が確認された。
▽レスピア静注・経口液60mg(無水カフェイン、ノーベルファーマ)
効能・効果:「早産・低出生体重児における原発性無呼吸(未熟児無呼吸発作)」
薬価:60mg3mL1瓶810円
市場予測(ピーク時9年後):投与患者数5.7千人、販売金額0.4億円
5%加算(有用性加算2):加算理由「TDMが必須でなく、1日1回投与による治療が可能であることから、類薬と比較して利便性の向上が期待でき、臨床的意義があると考えるなどと評価されていることを踏まえると、治療方法の改善が客観的に示されいる。」
10%加算(市場性加算1):加算理由「希少疾病用医薬品であり、比較薬は市場性加算を受けていないことから加算の要件に該当する。」
厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で医療上の必要性が高いと判断され、日本ベーリンガーインゲルハイムに開発要請していた。同社とノーベルファーマが共同開発した。
▽アネメトロ点滴静注液500mg(メトロニダゾール、ファイザー)
効能・効果:「各種嫌気性菌感染症、感染性腸炎、アメーバ赤痢」
薬価:500mg100mL1瓶1252円(原価計算方式)
市場予測(ピーク時7年後):投与患者数29千人、販売金額7億円
加算なし
厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で開発の必要性が指摘された。経口剤は塩野義製薬、膣剤は富士製薬が製造販売している。
▽アノーロエリプタ7吸入用(ウメクリジニウム臭化物 / ビランテロールトリフェニル酢酸塩、グラクソ・スミスクライン)
効能・効果:「慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解(長時間作用性吸入抗コリン剤および長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)」
薬価:1キット1997.20円
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数35万人、販売金額190億円
加算なし
LAMA/LABA配合剤では13年9月に承認されたウルティブロ吸入用カプセル(ノバルティス)に続き、2剤目となる。1日1回吸入投与する。
▽ミレーナ52mg(レボノルゲストレル、バイエル薬品)
効能・効果:「過多月経」
薬価:1個2万6984.30円(原価計算方式)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数53千人、販売金額14億円
加算なし
同剤は、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で医療上の必要性が高いと判断され、バイエルに開発要請していた。
▽ドボベット軟膏(カルシポトリオール水和物/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、レオ ファーマ)
効能・効果:「尋常性乾癬」
薬価:1g276.40円
市場予測(ピーク時7年後):投与患者数25万人、販売金額45億円
加算なし
▽クレナフィン爪外用液10%(エフィナコナゾール、科研製薬)
効能・効果:「皮膚糸状菌(トリコフィトン属)による爪白癬」
薬価:10%1g1657.50円
市場予測(ピーク時7年後):投与患者数10万人、販売金額35億円
爪白癬は一般的に爪水虫と呼ばれ、真菌の一種が原因で発症する。爪真菌症での外用薬は初となる。
予測投与患者数1000人以下が9成分
今回の収載では、予測投与患者数が1000人以下のニッチ製品が9製品あった。最も少ないのは、シスチンが腎臓に蓄積し、生後間もなく腎機能が低下する遺伝性疾患「腎性シスチン症」の治療薬ニシスタゴンカプセル(マイラン製薬)の6人。
▽オプジーボ点滴静注20mg、同100mg(ニボルマブ遺伝子組換え、小野薬品)
効能・効果:「根治切除不能な悪性黒色腫」
薬価:
20mg2mL1瓶15万0200円
100mg10mL1瓶72万9849円
(原価計算方式)
市場予測(ピーク時2年後):投与患者数470人、販売金額31億円
60%加算:加算理由「ダカルバジンを含む化学療法歴を有する患者を対象とした国内第2相試験において、主要評価項目とされた本剤の中央判定による奏効率(22.9%)の90%信頼区間の下限値(13.4%)は、ダカルバジンの臨床試験成績を基に設定された閾値奏効率(12.5%)を上回っており、その有効性が確認された。また、インターフェロンベータやダカルバジンが1980年代半ばに承認されて以降の悪性黒色腫に対する薬剤であり、根治切除不能な悪性黒色腫に対する治療選択肢の一つとして臨床的意義があると評価されている。」
▽ニシスタゴンカプセル50mg、同150mg(システアミン酒石酸塩、マイラン製薬)
効能・効果:「腎性シスチン症」
薬価:1カプセル
50mg215.90円
150mg571.10円
(原価計算方式)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数6人、販売金額0.12億円
加算なし
腎性シスチン症はシスチンが腎臓に蓄積し、生後間もなく腎機能が低下する遺伝性疾患。未治療患者の65%が10歳までに末期腎不全に至ると報告されている。この適応を有する既存薬はなく、食事療法、腹膜透析、腎移植などが行われている。ニシスタゴンは、ライソゾーム内のシスチンと反応することで細胞外に排出可能な状態とし、細胞内のシスチン濃度を低下させる。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で開発の必要性が指摘された。
▽ラパリムス錠1mg(シロリムス、ノーベルファーマ)
効能・効果:「リンパ脈管筋腫症」
薬価:1錠1285.00円(原価計算方式)
市場予測(ピーク時5年後):投与患者数150人、販売金額1.2億円
加算なし
▽デルティバ錠50mg(デラマニド、大塚製薬)
効能・効果:「本剤に感性の結核菌による多剤耐性肺結核」
薬価:1錠6125.00円(原価計算方式)
市場予測(ピーク時2年後):投与患者数60人、販売金額5.6億円
40%加算:加算理由「多剤耐性結核治療に新たな選択肢を提供するものであり、臨床的意義があると評価されている。また、我が国で 1970年代にリファンピシンが登場して以来の新たな抗結核薬であり、多剤耐性結核に有効性が期待される数少ない薬剤である。」
▽トレプロスト注射液20mg、同注射液50mg、同注射液100mg、同注射液200mg(トレプロスチニル、持田製薬)
効能・効果:「肺動脈性肺高血圧症(WHO機能分類クラスII、IIIおよびIV)」
薬価:
20mg20mL1瓶18万6277円
50mg20mL1瓶33万9537円
100mg20mL1瓶53万4711円
200mg20mL1瓶84万2076円
市場予測(ピーク時8年後):投与患者数200人、販売金額36億円
加算なし
厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での検討結果を踏まえ、同省から開発要請されていた。
▽ビプリブ点滴静注用400単位(ベラグルセラーゼ アルファ遺伝子組換え、シャイアー・ジャパン)
効能・効果:「ゴーシェ病の諸症状(貧血、血小板減少症、肝脾腫および骨症状)の改善」
薬価:1瓶30万0146円
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数30人、販売金額15億円
加算なし
▽ジェブタナ点滴静注60mg(カバジタキセル アセトン付加物、サノフィ)
効能・効果:「前立腺がん」
薬価:60mg1.5mL1瓶59万3069円(原価計算方式)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数640人、販売金額30億円
加算なし
▽オルプロリクス静注用500、同1000、同2000、同3000(エフトレノナコグ アルファ遺伝子組換え、バイオジェン・アイデック・ジャパン)
効能・効果:「血液凝固第9因子欠乏患者における出血傾向の抑制」
薬価:
500国際単位1瓶10万6104円
1000国際単位1瓶20万9985円
2000国際単位1瓶41万5572円
3000国際単位1瓶61万9531円
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数560人、販売金額79億円
5%加算(有用性加算1):加算理由「臨床薬理試験の成績から、既存のFIX製剤と比較して、状況によっては投与回数の低減が期待できると評価されていることから、限定的ながら治療方法の客観的な改善が認められると考えられる。」
▽バイクロット配合静注用(乾燥濃縮人血液凝固第10因子加活性化第7因子、化学及血清療法研究所)
効能・効果:「血液凝固第8因子又は第9因子に対するインヒビターを保有する患者の出血抑制」
薬価:1瓶26万3394円
市場予測(ピーク時3年後):投与患者数120人、販売金額46億円
10%加算(市場性加算1):加算理由「希少疾病用医薬品であり、比較薬は市場性加算を受けていないことから、加算の要件に該当する。」