武田薬品は７月31日、医師らへの資金提供内容を開示する透明性ガイドラインに基づき、2012年度（12年４月～13年３月）の支払い実績を同社ホームページ上で公開した。支払い総額は400億6700万円（10万円以下切り捨て、以下同）で、12年度の国内医療用医薬品売上5880億円に占める割合は6.8％になる。臨床試験費を中心とする「研究費開発費等」の支払いが265億2400万円と支払額全体の６割以上を占めるが、次いで多かったのが、講演会費や説明会費などの「情報提供関連費」83億8200万円で全体の２割を占めた。これまでに数社の外資系企業が開示したが、内資系企業では初の開示となる。

武田薬品の支払い実績を見てみる。「研究費開発費等」の８割以上を臨床試験費（219億6600万円）が占め、次いで多かったのが委託研究費24億3700万円となっている。「学術研究助成費」は計28億2000万円で、その内訳は、学術振興や研究助成を目的に提供する奨学寄附金が21億円、医療機関等の周年事業その他の事業運営の支援を目的に提供する一般寄附金が２億4000万円、学会等が主催する会合の支援を目的に提供する学会寄附金が１億2000万円、学会等と共催する会合について同社が支出する会場費などの費用（講師謝金除く）を指す学会共催費が３億6000万円――だった。

同社が医療機関等に依頼した講演や原稿執筆などに関する費用の「原稿執筆料等」は計15億5500万円で、その９割近くを講師謝金（13億7000万円）が占めた。プロモーション資材などの原稿執筆や監修にかかる費用（広告代理店などの経由含む）を指す原稿執筆料・監修料は5200万円、研究・開発・マーケティングに関する指導や助言などの業務委託費用を指すコンサルティング等業務委託費は１億3200万円だった。

◎講演会などの「情報提供関連費」　武田とファイザー80億円台、ノバルティス99億円

医療機関等に対して医学・薬学に関する情報提供をするための講演会などの費用を指す「情報提供関連費」は83億8200万円。その６割以上が講演会費で、年間件数は１万498件、その費用は53億1800万円だった。また、ＭＲなどによる自社品の説明会は５万9228件で、その費用は16億3500万円。医学・薬学関連文献等提供費は14億2700万円だった。

社会的儀礼としての接遇費やＭＲ活動に伴う飲食費などを指す「接遇費等費用」は７億8500万円で、医師らへの支払い総額の２％だった。

これまでに開示した企業のうち支払い総額が100億円を超えたのは武田薬品のほか、ファイザー（支払い総額約240億円、対売上比率4.6％）とノバルティス（約237億円、7.3％）の計３社。支払い総額では武田薬品が最も多い。

ただ、支払い内容を単純比較してみると、武田薬品は「研究費開発費等」と「学術研究助成費」で２社を上回り、特に研究費開発費等はファイザーの２倍以上、ノバルティスの３倍程度となっていた。「学術研究助成費」では武田薬品が他２社より約６～８億円多い。

一方で、「原稿執筆料等」は武田薬品とノバルティスがほぼ同額、ファイザーが４億円程度少ない。そして、「情報提供関連費」と「接遇費等費用」はノバルティスが他２社より多く、特に「情報提供関連費」では武田薬品が83億円、ファイザーが88億円、ノバルティスが99億円。「接遇費等費用」でもノバルティスが武田薬品より約３億円、ファイザーより約７億円多かった。

武田薬品　透明性ＧＬに基づく12年度支払い実績
Ａ．研究費開発費等　総額265億2401万5752円
共同研究費　４億2747万2152円
委託研究費　24億3702万3915円
臨床試験費　219億6609万1466円
製造販売後臨床試験費　５億1821万4032円
副作用・感染症症例報告費　４億2110万6829円
製造販売後調査費　７億5410万7358円

B．学術研究助成費　総額28億2000万円
奨学寄附金　21億円
一般寄附金　２億4000万円
学会寄附金　１億2000万円
学会共催費　３億6000万円

C．原稿執筆料等　総額15億5596万368円
講師謝金　13億7099万4504円
原稿執筆料・監修料　5250万7396円
コンサルティング等業務委託費　１億3245万8468円

D．情報提供関連費　総額83億8207万8097円
講演会費　53億1868万8781円（１万498件）
説明会費　16億3599万3558円（５万9228件）
医学・薬学関連文献等提供費　14億2739万5758円

Ｅ．接遇等費用　総額７億8552万7925円