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【ESC事後特集】メタ解析 クロピドグレル治療下の心血管疾患患者 PPI併用で上部消化管出血を抑制

公開日時 2012/10/15 05:00

クロピドグレル治療下の冠動脈疾患または脳卒中患者において、プロトンポンプ阻害剤(PPI)併用の有無に分けて治療効果を比較すると、併用患者では、上部消化管出血の発生率が有意に低いことが分かった。一方で、全死亡と心筋梗塞、脳卒中の発生については、有意差がみられなかった。6つのランダム化比較試験(RCT)、5295例を対象とした、メタ解析の結果から分かった。8月26~29日の日程で、ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州心臓病学会(ESC)2012で開かれたセッション「MEDICAL THERAPY FOR CORONARY ARTERY DISEASE:DEFINING OUR TREATMENT OPTIONS」で、東京大学医学部付属病院特任助教の桜井亮太氏が29日に報告した。


クロピドグレルを投与されている患者における、プロトンポンプ阻害剤(PPI)併用の影響は、これまでにメタ解析でも検討されてきたが、ランダム化試験(RCT)と観察研究との間で一貫した結果が得られていない。そこで桜井氏は、クロピドグレルを服用する冠動脈疾患または脳卒中の患者において、PPIによる臨床転帰への影響を検討した。


解析対象は、MEDLINEやEMBASEを初めとする医学データベースから抽出した6つのRCTで、被験者数は5295例。PPIを併用した患者(以下、PPI併用群、2659例)と併用しなかった患者(以下、対照群、2636例)に分け、全死亡と心筋梗塞、脳卒中、上部消化管出血の発生を比較した。投与されたPPIはオメプラゾールとエソメプラゾール、パントプラゾール。追跡期間は1~6カ月。RCTの質を評価するJadad Scoreは、最高の5点が2件、4点、3点、2点、1点はそれぞれ1件だった。


解析の結果、全死亡(オッズ比(OR):1.05、95%信頼区間 (CI): 0.67 – 1.66、p=0.83)と心筋梗塞(OR:1.10、95%CI:0.58 – 2.09、p=0.77)、脳卒中(OR:0.97、95%CI:0.31 – 2.99、p=0.96)は、PPI併用群と対照群との間に有意差はみられなかった。一方で、上部消化管出血の発生はPPI併用群で有意に低いことが示された(OR:0.21、95%CI: 0.10 – 0.45、p<0.0001)。

一般的に否定的な結果について、出版されづらいとされる、出版バイアスに ついて評価項目に分けて検討したところ、全死亡と心筋梗塞で、むしろPPI併用群を優位とする研究が不足しているバイアスの可能性が見られたが、脳卒中と上部消化管出血ではバイアスは見られなかった。


桜井氏は、同解析の限界として、▽解析対象となったRCTの数が少なかった▽追跡期間が短い▽評価項目の定義が試験によって異なる▽出版バイアスの可能性がある――点を列挙した。その上で、クロピドグレルとPPI併用群は、対照群に比べ、上部消化管出血が有意に抑制されていた一方で、全死亡、心筋梗塞、脳卒中の発生は両群で同等だったと説明。「冠動脈疾患または脳卒中におけるPPIの併用により、より良好な転機が導かれた」と結論付けた。

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