【ASCO特別版】JCOG0301最新データ 高齢の局所進行性NSCLC患者への放射線療法+カルボブラチンの同時併用で生存期間を延長
公開日時 2012/06/06 05:00
局所進行性非小細胞肺がん(NSCLC)の高齢患者に対する、放射線療法+カルボブラチンの同時併用は、放射線療法単独と比べ、生存期間を有意に延長させたことが分かった。横浜市立市民病院部長の岡本浩明氏が、放射線療法+カルボブラチンの同時併用は、放射線療法単独との治療効果を比較検討した無作為化第3相試験「JCOG0301」の最新データを報告する中で明らかにした。6月1日から開幕した米国臨床腫瘍学会(ASCO2012)のポスターディスカッションセッションで、3日発表された。
局所進行性NSCLCに対する現在の標準治療は、同時化学放射線療法(放射線療法と化学療法の同時併用)とされているが、III期の高齢患者を対象とした臨床試験はほとんど実施されておらず、認容性についてはまだ十分に分かっていない。
対象は、71歳以上で組織学的に切除不能の局所進行性NSCLCと診断されたIIIA期(T3N1M0は除く)またはIIIB期の患者。2003年9月~2010年5月までに200例が登録された。主な登録規準は、 測定可能な病変で、ECOG PSが0~2であること、臓器機能に問題がないことなどだった。化学療法もしくは放射線療法の前治療歴のある患者、シスプラチン併用療法が可能と見なされる患者は除外した。
被験者を1:1の割合で、①放射線単独(以下、RT群)②放射線療法とカルボプラチン同時併用群(以下、CRT群)――に割り付けた。RT群では、総線量60Gy/30 fr、5日間連続照射2日間休薬を1サイクルとし、計6サイクルを実施。一方、CRT群では、RT群と同じ線量の放射線療法に加え、カルボプラチンを30mg/m2/日、5日間継続投与2日間休薬を1サイクルとし、計4サイクル投与した。被験者はPS、病期、施設で層別化された。
主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は奏効率(ORR)、無増悪生存期間、増悪部位、安全性に設定した。
患者特性は両群で有意差はなく、年齢中央値は両群とも77歳、男女比は8:2。病期はRT群でIIIA 54例、IIIB 46例、CRT群ではそれぞれ51例、49例、T因子はRT群で1が13例、2が41例、3が15例、4が31例で、CRT群ではそれぞれ12例、42例、13例、33例だった。N2以上の症例は両群とも85例、PSはRT群で0が41例、1が55例、2が4例で、CRT群ではそれぞれ41例、56例、3例。またRT群の92例とCRT群の87例が喫煙者だった。
200例目参加時の中間解析のOSは、RT群で16.9カ月だったのに対し、CRT群22.4ヶ月で、既にCRT群に有意なOS延長が見られていた(HR=0.68, 95.4%CI=0.47-0.98、p=0.0179)。ORRはRT群(98例)が44.9%、CRT群(99例)が54.6%だった。
登録終了から追跡1年半の最新のOSは、RT群が16.5カ月、CRT群が22.4カ月(ハザード比:0.64[95%CI:0.46-0.89]、p=0.0033)で、性別や年齢、病期、PS、組織型などを調整した多変量解析でも、CRT群が有意に高いOSを示した(ハザード比0.71、p=0.0375)。3年生存率はRT群14.3%、CRT群34.6%、PFSそれぞれ6.9カ月、8.9カ月だった(p=0.003)。
CRT群で見られたグレード3以上の毒性は血液関連が主で、白血球(63.5%)、好中球(57.3%)、血小板(29.2%)に毒性が見られた。また感染症が12.5%発生していた。
治療後の増悪部位において明らかな群間差はなく、再発部位(局所/遠隔/局所+遠隔)は、RT群において37/34/16例、CRT群では35/35/13例であった。
これらの結果から研究グループは、「同試験が高齢のIII期NSCLC患者においても、CRTが臨床的有意な治療ベネフィットを与えることを示した、世界初の前向き臨床試験だ」と強調した。また、「予後因子の調整後もCRT群は有意な生存ベネフィットを示し、治療後の増悪病変パターンは両群でほぼ同じだった」とまとめた。その上で、「カルボプラチンを使用したCRTは局所進行性NSCLCの高齢患者の標準治療として考慮されるべきだ」と結論付けた。