プラスグレルのインパクト 抗血小板凝集作用効果発現の早さ、強さが特徴に
公開日時 2013/03/19 05:00
新規抗血小板薬・プラスグレルの特徴について、小倉記念病院循環器内科部長の横井宏佳氏は、▽早い立ちあがり▽強い抗血小板凝集抑制作用▽日本人に適した用量で出血性イベントを抑える――特徴があるとの見解を示した。臨床第3相試験「PRASFIT-ACS」の結果を受け、4月16日に開催された第一三共主催のメディアブリーフィングで明らかにした。
第二世代薬剤溶出性ステント(DES)の登場で臨床成績が向上する中にあって、「ベアメタルステント(BMS)の時代と比べても、急性期のステント血栓症の発生率はあまり減ってきてはいない」と横井氏は現状の課題を指摘。発生率も「実臨床の感覚として、待機的PCI施行例と比べ、10倍くらい発生頻度が高い印象がある」と述べ、リスクの高さを強調した。その上で、クロピドグレルは投与開始から効果発現までに時間を要することから、loadingだけでは十分な治療効果が得られないケースも少なくなく、「もっと強く早く効く薬を求めていた。この用量で安全に使えることが分かったので、急性期のステント血栓症がかなり減るのではないかと期待している」と述べた。
◎東邦大・中村氏「ACSのステント血栓症は多くが初日に」
海外では、急性期に血小板凝集抑制効果が強いGPⅡa/Ⅲb阻害薬を用いるケースも少なくないが、国内では用いることができず、クロピドグレルのloading が主な治療法だ。東邦大学医療センター大橋病院循環器内科教授の中村正人氏は、日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)が行った抗血小板薬のレジストリーの結果を引き合いに出し、ACSのほとんどの患者にクロピドグレルloading300mg/維持用量:75mgが投与されていたとした。その上で、「ステント血栓症の起きた時期は、初日がピーク。半数は、カテ室(心臓カテーテル検査室)内で起きている。つまり、治療中にやってもやっても詰まっているということ。これは、早期からより強力な抗血小板薬を投与することが良いことを示している」との見解を示した。
◎帝京大・一色氏「バラツキのなさで臨床側に安心感」
また、プラスグレルは肝代謝酵素CYP2C19の遺伝子多型の影響を受けないことも特徴の1つとされている。帝京大学医学部内科教授一色高明氏は、アウトカムベースでは、クロピドグレル低反応性の割合の割には、心血管イベントは起きていないと説明。一方で、「実際にイベントを起こしている人は、ほとんどがpoor metabolizerだ」との見方も示した。さらに、「OCT(Optical Coherence Tomography)でステントの中を見るスタディが行われているが、クロピドグレルが投与されていても血栓像はある」ことも紹介。「たとえば、何かの理由で薬をやめた、血栓のできやすい環境にさらされたときに、血栓症を起こすのではないか」との考えを示した。その上で、「個人のバラツキのない血小板凝集抑制作用が一定の頻度で使えるというのは、臨床側にとっては安心感がある」と話し、同剤のバラツキの少なさの臨床における有用性を強調した。