【ACCリポート】DIG post-hoc解析 見直されるジゴキシンの有用性 心不全患者の再入院を34%減少
公開日時 2013/03/26 06:00
30日以内の再入院率の高さが知られる心不全だが、強心薬・ジゴキシンの投与により、30日以内の再入院を減少させる可能性が示唆された。NHLBIのデータベースを後ろ向きに解析した「DIG(The Digitalis Investigation Group)」の結果から示された。3月9~11日の日程で開催された第62回米国心臓学会議(ACC.13)で11日に開かれたLate Breaking Clinical Trialsセッションで、University of AlabamaのAli Ahmed氏が報告した。
米国では、心不全は、入院および再入院の最大の原因とされている。2012年10月から、30日以内の再入院率の高い医療機関に対し、心不全の再入院についてはペナルティが課せられており、10月の時点で、2000以上の病院に対して、総額約3億ドルなるともと試算されている。
試験は、ジゴキシン投与が30日以内の全再入院に及ぼす影響を検討することを目的に実施された。対象は、1991~93年に同試験に登録された左室駆出率(LVEF)低下(≤45%)を有するが、歩行可能な6800例のうち、メディケア受給の資格を有する65歳以上の高齢患者3405例(プラセボ群:1712例、ジゴキシン群:1693例)。
試験では、ACE阻害薬の併用が90%以上、利尿薬の併用が80%以上だった。平均年齢は72歳、女性は25%で、白人以外は11%、平均LVEFは29%、NYHAクラスⅢ~Ⅳの患者が1/3強を占めていた。ジゴキシンの用量は、0.25mg/日が7割(プラセボ群:1197例、70%、ジゴキシン群:1209例、72%)、0.125mg/日が25%(プラセボ群:433例、25%、ジゴキシン群:426例、25%)だった。BMIはジゴキシン群25.9kg/㎡で、プラセボ群の26.2kg/㎡に比べ、有意に低かった(p=0.040)が、そのほかの患者背景については両群間に差はみられなかった。
無作為化から30日以内の入院は、プラセボ群8.1%に対してジゴキシン群では5.4%で、絶対リスクは2.7%、相対リスクは34%(ハザード比(HR):0.66、95%CI:0.51-0.86、p=0.002)、有意に低下していた。心不全悪化による入院に限ると、プラセボ群4.2%に対し、ジゴキシン群では1.7%で、絶対リスクが2.5%、相対リスクは60%(HR:0.40、95%CI:0.26-0.62、p<0.001)、有意に低下していた。全死亡+30日以内の全再入院は、プラセボ群8.7%、ジゴキシン6.0%で、絶対リスク2.7%、相対リスクは31%(HR:0.69、95%CI:0.53-0.88、p=0.003)有意に低下していた。これらのベネフィットは、患者背景によらず、認められた。
Ahmed氏は 年間5500億ドルに迫るメディケアの支出のうち、入院は1/4、このうちの1/6を再入院が占めていると指摘。「忍容性が高く、心不全による入院リスクを長期にわたって低下させ、かつ安価で認可済みの薬剤ジゴキシンが、すべての原因による30日以内の入院を減少させることが分かった」と説明した。
その上で、データが20年以上昔のものであること、ジゴキシンの使用率が現在とは異なることなど、試験の限界に言及した。その上で、「今日の心不全患者における再評価や、退院前の使用についての評価も行う必要はあるだろう」と指摘しながら、「患者にとっても、ヘルスケアシステムの観点からも、ジゴキシンは非常にシンプルで低コストのツールになることが可能だ」との見解を示した。