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【ISC2013事後リポート】SPS3 ラクナ梗塞患者への積極的な降圧療法の有効性示唆  脳内出血のリスク低下

公開日時 2013/02/20 06:00

ラクナ梗塞患者において、収縮期血圧値130 mmHg未満を目指した積極的な血圧への介入により、脳卒中の再発に有意差はみられなかったものの、約20%発生率を低下させたことが分かった。懸念された脳内出血のリスクも低下させたことも示された。ラクナ梗塞患者の再発予防を検討した無作為化多施設試験「SPS3(The Secondary Prevention of Small Subcortical Strokes)」の結果から分かった。2月6~8日まで米・ホノルルで開催された国際脳卒中学会(ISC2013)で、8日に開かれた「Plenary Session」のLate-breaking演題として、カナダUniversity of British ColumbiaのOscar Benavente氏が報告した。


試験は、ラクナ梗塞患者の脳卒中再発抑制において、積極的な降圧療法(オープンラベル)と積極的な抗血小板療法(二重盲検下)の有用性を同時に検討した2×2factorial desingnとして実施された。すでに抗血小板療法については報告され、アスピリン+クロピドグレルの併用療法を行う積極的な治療がアスピリン単剤に比べ、優越性を示すことができなかったことが報告されている。


今回報告された降圧療法は、目標収縮期血圧値を130~149 mmHgにした標準療法群と、130 mmHg未満とした積極的治療群に分け、治療効果をオープンラベルで比較した。


対象は、発作から180日以内にMRIでラクナ梗塞を確認した3020例で、130mmHgを目指した積極的治療群1501例、130~149 mmHgを目指した標準療法群1519例の2群に無作為に割り付けた。登録期間は、2003年3月~11年4月までで、北米と南米、スペインの8カ国、81施設から登録された。


主要評価項目は、脳卒中の再発(虚血性、出血性含む)。副次評価項目には大血管イベント+認知低下+死亡。発作から無作為化までの期間は平均62日間、追跡期間は平均3.7年だった。なお、プロトコルでは降圧剤の種類は指定されていなかった。


平均年齢は両群ともに63歳、男性の割合は積極的治療群61%、標準治療群65%、既往歴は高血圧が両群とも75%、糖尿病は積極的治療群37%、標準療法群36%、虚血性心疾患は積極的治療群10%、標準治療群11%、脳卒中またはTIAは積極的治療群16%、標準治療群14%だった。試験登録時の収縮期血圧は、積極的治療群144 mmHg、標準治療群145 mmHg、拡張期血圧は積極的治療群78 mmHg、標準治療群80 mmHgだった。


ベースライン時の降圧薬の処方は、積極的治療群1.7種類、標準治療群1.8種類。内訳はサイアザイド系利尿薬が積極的治療群で58%、標準治療群で43%、ACE阻害薬/ARBが積極的治療群80%、標準治療群63%、Ca拮抗薬が積極的治療群43%、標準治療群30%、β遮断薬が積極的治療群31%、標準治療群25%だった。


試験終了時には積極的治療群が2.4種類に増加したが、標準療法群は1.8種類で変化がみられなかった。この時点で最も多く投与されていたのがACE阻害薬/ARBで、積極的治療群78%、標準治療群60%だった。次いで、サイアザイド系利尿薬で積極的治療群54%、標準治療群38%だった。Ca拮抗薬は積極的治療群43%、標準治療群39%、β遮断薬は積極的治療群35%、標準治療群28%だった。


収縮期血圧値は、試験終了時に積極的治療群126.9 mmHg、標準治療群137.8 mmHgで、11 mmHgの差がみられた。


◎脳内出血リスクは積極治療で1/3に 虚血性脳卒中に有意差はみられず


主要評価項目(脳卒中の再発)は、標準治療群2.8%/患者・年、積極的治療群2.3%/患者・年で、両群に有意差はみられなかったものの、積極的な治療により脳卒中の再発を約20%抑制することが分かった(ハザード比(HR):0.81、95%CI: 0.64 – 1.03、p=0.08)。内訳は、脳内出血が標準療法群0.29%/患者・年、積極的治療群0.11%/患者・年で、積極的治療により60%以上の有意な低下がみられた(HR:0.37、95%CI:0.15 – 0.95、p=0.03)。一方で、虚血性脳卒中は、標準療法群2.4%/患者・年、積極的治療群2.0%/患者・年(HR:0.84、95%CI:0.66 – 1.09、p=0.19)で、差はみられなかった。


副次評価項目の大血管イベント(積極的治療群:3.0%/患者・年、標準治療群:3.4%/患者年、p=0.10)、死亡(130 mmHg未満群:1.8%/患者年、標準群:1.74%/患者年、p=0.82)においても、両群間で有意差はみられなかった。


血圧低下による重篤な合併症の発生率は、積極的治療群0.4%/患者・年、標準治療群0.26%/患者・年だった(p=0.2)。内訳は、起立性失神(積極的治療群:0.19%/患者年、標準治療群:0.08%/患者年、p=0.14)、脳卒中(積極的治療群:0.034%/患者年、標準治療群:0.017%/患者年、p=0.57)などだった。降圧剤による重篤な合併症は、130 mmHg未満群の1例だった。


これまでに実施された、脳卒中またはTIAの既往患者において、降圧療法による再発抑制効果を検討した試験では、Dutch TIA試験は18%(1993年、Ca拮抗薬・アテノロール)、PATS試験は29%(1995年、利尿薬・インダパミド)、INDANA試験は29%(1997年、多剤併用)、HOPE試験15%(2000年、ACE阻害薬・ラミプリル)、PROGRESS試験28%(2001年、ACE阻害薬・ペリンドプリル vs 利尿薬・インダパミド)、PRoFESS試験5%(2008年、ACE阻害薬・テルミサルタン)などで、同試験の相対的リスク低下率19%がほぼ同等であると指摘。「脳卒中既往患者での降圧療法の治療効果を検討したこれまでの試験と一貫した成績」との見方を示した。


Benavente氏は、これらの結果から「降圧目標をより厳格にする治療は、実行可能で、安全かつ忍容性がある」とし、有効性を強調した。

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