第二世代のデバイスとされる、ステント型血栓回収デバイス・Solitaire　FRを用いた再開通療法を虚血性脳卒中急性期に実臨床で行った結果、臨床試験と同等の再開通率を示す一方で、死亡率はやや増加したことが分かった。Solitaire　FRを導入している北米24施設が参加する、NASA（The North American Solitaire Acute Stroke）レジストリーの解析結果から示された。2月6～8日まで米ハワイ・ホノルルで開催されている国際脳卒中学会(ISC2013)のポスターセッションで6日、米Medical College of WisconsinのOsama Zaidat氏が報告した。

Solitaire　FRを用いた治療成績は、第一世代のデバイスであるMerci Retrieverと比較した「SWIFT」から、 高い再開通と有効性が示され、Merci Retrieverへの優越性が示された。ただ、市場流通後の実臨床におけるSolitaire FRの治療成績はまだ少ないのが現状だ。

NASAレジストリーは、北米でSolitaire　FRを用いる24施設が自主参加する医師主導型臨床試験の登録システム。今回の解析では、Solitaire　FRの実臨床での有効性を検討するため、Solitaire　FRを用いた合計343例の急性虚血性脳卒中患者の治療成績を、第二世代デバイスの臨床成績である、Solitaire　FRの臨床第３相試験「SWIFT」とTrevoの臨床第３相試験「TREVO-2」と比較した。

主要評価項目は、再開通における転帰を示す、TIMIが2以上の達成率、またはTICIが2a以上の達成率。副次評価項目には、臨床転帰を示す3カ月目の修正ランキンスケール（mRS）と死亡、症候性頭蓋内出血（sICH）とした。

平均年齢は、NASAレジストリーが67.3歳、SWIFT（58例）が67.1歳、TREVO-2（88例）が67.4歳。合併症は、心房細動がNASAレジストリーで42.5%、SWIFTで45%、TREVO-2で48%、糖尿病はNASAレジストリーで24.3%、SWIFTで24%、TREVO-2で38%、脂質異常症はNASAレジストリーで51%、SWIFTで53%、TREVO-2で63%だった。平均NIHSSは、NASAレジストリーが18.2、SWIFT試験で17.3、TREVO-2で18.3だった。

梗塞領域は、中大脳動脈M1領域が最も多く、NASAレジストリーで55.3%、SWIFTで66%、Trevo-2で60%、内頸動脈はNASAレジストリーで23.1%、SWIFTで21%、TREVO-2で16%だった。脳底動脈での発作は、
NASAレジストリーで11.3%、SWIFTで2%、TREVO-2で8%で、NASAレジストリーの患者に多い傾向があった。また発作から鼠径穿刺までの時間は、NASAレジストリーで368.3分、SWIFTの293.5分、TREVO-2の276分と比べ、デバイスの挿入が約70分遅かった。

◎死亡率　発作から鼠径穿刺までの時間や脳底動脈での血栓発生率の高さが影響？

TIMI 2以上の達成率は、SWIFTの83%に対してNASAレジストリーは83.3%、TICI 2a以上の達成率も、TREVO-2試験の85%に対し、NASAレジストリーは87.2%だった。90日目のmRSは、良好な転帰とされる2以下の割合が、NASAレジストリーでは41.4%で、SWIFTの37%、TREVO-2の40%と同等だった。一方、
ｓICHと死亡は、NASAレジストリーでは高い傾向にあり、ｓICHはSWIFTで2%、TREVO-2で4%に対し、NASAレジストリーは10%、90日間の死亡率はSWIFTの17.2%、TREVO-2の29%に対し、NASAレジストリーは30.4%だった。

研究グループは、これらの結果から、「Solitaire FRの実臨床における治療効果は、SWIFTとTREVO-2の結果と同等だった」と結論付けた。また、「発作から鼠径穿刺までの時間が、NASAレジストリーでは約70分長かったにもかかわらず、臨床転帰はSWIFTとTREVO-2と同等であった」と有効性を強調した。死亡率がNASAレジストリーで高いことについては、「発作から鼠径穿刺までの時間が長かったことと、脳底動脈での血栓発生率が高かったことに起因するかもしれない」との見解を示した。


【ISC取材班】望月英梨、医学ライター森永知美