国内製薬トップ年頭所感 成長を現実のものに 課題を具体的に指摘し呼びかけ
公開日時 2013/01/08 04:01
国内製薬企業のトップの年頭所感が1月7日までに発表され、大手・準大手では課題を具体的に指摘しながら、成長を可能性にとどめず現実のものにすることを呼びかける内容が目立った。
武田薬品の長谷川閑史社長は、「13年度は、売上は引き続き伸長するものの、利益面では厳しい年になる見通しだ」とし、「経営の質」を向上に取り組む年と位置づけた。具体的には、▽「大手グローバル製薬企業の水準まで営業利益率を引き上げる」利益改善▽「真のグローバル企業」に相応しい「英語で自由にコミュニケーションできる環境の早期整備」「若い人材の計画的育成」「外国人を含めた、即戦力の人材の獲得」など人材育成・獲得の強化--などに注力するとした。
第一三共の中山讓治社長は、「今年は将来に向けた明るい可能性を現実のものにしていく年」と指摘。骨粗鬆症治療薬としてのデノスマブの発売、抗血小板薬プラスグレルの承認申請といった同社が期待する製品の進捗があることに加え、経口ファクターXa阻害薬エドキサバンの大規模臨床試験の主要結果が得られることを材料に成長する基盤を整えることを課題に挙げた。
アステラス製薬の畑中好彦社長は、前立腺がん治療薬エンザルタミド、過活動膀胱治療薬ミラベグロンなど13の製品の承認取得・新薬発売を国内外で達成したことを挙げ「13年はこの成長をさらに加速させるべく、進化し続ける強い組織を目指し、引き続き必要な改革に取り組む」と表明した。
エーザイの内藤晴夫社長は、「現場の知を結果に結び付ける一年」とした。課題として「13年の4つの鍵」を挙げ、▽日本でのアリセプト単独販促体制への移行▽米国肥満治療において14年ぶりの新薬となるBelviqの上市と市場開拓▽ハラヴェンの日米欧での拡大とアジアでの上市▽新規抗てんかん剤Fycompaの欧州での拡大と米国上市--を指摘し、「着実な達成」を求めた。
大塚ホールディングスの樋口達夫社長は、「グローバリゼーションの流れにあって、特に企業は日々新たな課題に直面している。この大変動の中で、われわれは世界の人々の健康に貢献することを目指し、未来につながる道をぶれることなく自らの手で切り拓き、一途に進んでいこう」と呼びかけた。
田辺三菱製薬の土屋裕弘社長は、抗リウマチ薬の「レミケードとシンポニーで売上高1000億円を目指す重要な年」と指摘。加えて「大型化が期待される新規糖尿病治療剤TA-7284(SGLT2阻害薬)の国内申請を予定している。これらの実現によって、持続的成長を確実なものとする」とした。
中外製薬の小坂達朗社長は、「営業、マーケティングでは、これまでの強みをさらに高め、患者さんや医療従事者から圧倒的に支持されるソリューション、すなわち製品+αの価値提供に向けて変革を進め、『アバスチン』『ミルセラ』『エディロール』の伸長、海外における『アクテムラ』などの成長を目指す」とした。
大日本住友製薬の多田正世社長は、「製品力の強化が喫緊の課題であり、一刻も早く自社新製品の創製・上市することが私たちの使命。主力品の効能拡大や製品や後期開発品の導入にも全力を挙げて取り組む必要がある」と訴えた。
なお、塩野義製薬は、社長年頭所感を今年から外部に公表しないことになった。