選考の途中で突然、性格が豹変する転職者たち…。彼らに一体、何があったのか？
 

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キャリアとともに転職の選考では、人物評価が重要になる。ただ、容易に優劣が判断のつくキャリアに対して、人柄に正解というものはない。好まれやすいタイプというのはあるが、アグレッシブな人と温厚なキャラクター、どちらがより優れているとは言えないし、一般的に良いとされる明るい性格も、胡散臭いと敬遠されることもある。
唯一、企業が強く警戒するタイプがあるとすれば、それは…。

商社A社は若手営業の育成に悩んでいた。そこで若手の近い目標になるリーダーを採用することになり、Uさん（31歳）に白羽の矢を立てた。
Uさんは大柄な体に微笑みを絶やさない、気さくな人物。現在在籍している環境ビジネスのベンチャーでは結果が出ていないものの、その前にいた中堅メーカーでは抜群の実績を誇っていた。

A社は、若手を引っ張って行くには、実力はあるが、当たりのソフトな人が良いと考えており、Uさんの人物面を特に評価していた。
「辞められてしまうのが一番の痛手なので、新人に強く言いにくいというところがあったんです。けれど、彼のような大らかな人柄なら、叱っても厳しくなりすぎない、甘えられるようなところがあると思うんです」
Uさんは出来るだけはやく現職のベンチャーから転職したいと考えていたので、堅実な社風のA社の話は、彼にとってもありがたいものだった。

順調に見えたUさんの転職、だが給与条件の折衝の後、A社から困惑した様子の連絡があった。
「今日、Uさんから給与に関する質問メールを受け取ったのですが、その内容がたいへんに細かいもので、リストは100近い項目があったんです」
「それは、結構な数ですね」
「お金に関することは大事なことですし、決して細かいことを聞くな、というわけではありません。ただ、これまで、何につけ大らかだったUさんが、いきなり別人のように変わってしまって…」
「いや、我々も驚いています。面談の時に希望年収を聞きましたが、大雑把にこのくらいあればという話でしたから」
「正直言いますと、採用に関してもこれで大丈夫かという話が出ていまして、あまり性格がコロコロ変わるようだと、後輩たちも戸惑ってしまうでしょうから…」

A社の懸念を伝えると、Uさんは楽屋話を疲労してくれた。
「あのメールは僕が書いたものじゃないんです。お話ししていませんでしたが、実は来年に結婚を考えていまして、婚約者の彼女がA社について細かく聞いてきたものですから、『だったら、自分でメール書いて送って』って言ってしまいまして」
「それで急にA社の印象が違ってしまったんですね」
「僕が書き直して送信すればよかったんですが、彼女が書いたものをそのまま送ってしまったので。ご迷惑をおかけしました」
「いえいえ。それにしても、質問が100近くあったそうですよ。しっかりした婚約者の方ですね」
「ハハハ。僕が大雑把なので、それでバランスがとれているようです」
こうして、Uさんのケースは事なきを得たが、性格の豹変によって不採用になったしまったケースもある。

フードサービスB社で最終面接に進んでいた第二新卒のSさん（24歳）は、素直で謙虚な人柄。B社は「誠実で真面目な人柄。スレたところがないのが好印象」と、内定に向けて前向きな評価をしてくれていた。
ところが、Sさんは肝心の社長面接で対応が一変してしまい、あえなく不採用に…。

社長面接の数日前、Sさんはお義兄さんにあって、転職のアドバイスをもらっていた。年の離れた姉のひとまわり違う旦那さんということで、Sさんとお義兄さんとは親子ほど年の差があったが、Sさんは、親の後を継いで会社経営をしているお義兄さんに何かと世話になっており、尊敬もしていた。

「知り合いにも経営者がけっこういるけど、みんな言うことは同じだよ。トップは孤独。そして、下の者はそれを分かってくれない」
「はぁ、そういうものですか」
「会社員ってのはさ、せいぜい1年後の仕事くらいしか見てないんだよ。でも、経営者は5年後10年後を考えなきゃいけない。そういうところで差が出てくるのかなあ」
「なるほど」
「そういう孤独を感じている時にさ、若い人が面接に来て、一緒に夢見たいみたいなこと言ってくれると、経営者っていうのは嬉しいんだぞ」
「一緒に夢を？」
「ああ。若い人には勢いを求めるんだよ。いいか、小さくまとまっていると思われたたらダメだぞ。どんどん大きなことを言ってこなくちゃ」
「分かりました！」
Sさんはお義兄さんの言うことを素直に聞きいれ、社長面接でいきなり大胆なキャラに変身してしまったのだ。

転職において避けられる性格があるとすれば、それは豹変するタイプだろう。どんな性格の人を採用しようとしているのか分からないのは、誰にとっても不安なことなのだから。