面接は気分次第
公開日時 2012/10/24 04:00
転職者の面接キャンセルが続出。そんななか現れたHさんは礼儀正しい人物だったのだが…。
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若手転職者が直前になって面接をキャンセルしてくる、そんなケースが増えている。しかも、その理由というのがスゴい。
「今日はちょっと気分が悪くて、面接は延期させてください。いえ、病院にいくほど酷くはないんです。なんとなく気分が乗らなくて」
これでも相当なモノだが、ひどい場合は
「合コンが入ったんで」とか「サッカーW杯予選の試合があるのを忘れてました。今夕は早く帰らないと」などと言われることも。
おそらく、以前もこういう人はいたに違いないが、もっともな理由を言ってくるくらいの節度は持っていた(けっして、ウソをつくことを奨励するつもりはないが)。
それが、今の若者は実に正直なのだ。いくらエージェント相手で本音が言えるといっても、こうあからさまでは、我々も小言じみたアドバイスをせざるを得なくなる。
ただ、これをもって「だから今の若者がダメなんだ」と断じるつもりはない。彼らがそうしてしまう背景には、現代の就活事情があるからだ。
ネットをフル活用する今の就活では、エントリーはクリックひとつで済む。よってエントリーの数は膨大になり、個々の会社への思い入れは薄くなる。
面接に対する意識も軽い。就活の一次面接(会社説明会)は、大勢で会社側の話を聞いて、取りあえず人事と軽く会話を交わす程度ものが多く、日を分けて何度も開催されるのも普通だ。このペースに慣れてしまうと、面接に行くかどうかは気分次第という感覚になるのも理解できなくはない。
就活のイメージがぬけていない第二新卒層には、日程調整のときから口を酸っぱくして面接の重要性を説かなくてはならない。
「面接というのは、会社のなかで決定権を持つ立場の人が、あなたの為だけに時間を割いてくれているものです。ですから気軽に時間を変えたり、キャンセルしたりは出来ませんよ」
こうした台詞を、繰り返ししつこいくらいに言っても、なかなか分かってくれないのが実情で、美容院の予約を変更するようなお客さま気分で、「やっぱりこの日はダメです」というメールが日々、我々のところに届けられてくる。
Hさん(24歳)は、我々が「面接には、出来る限り直前キャンセルのないように」と話をすると、当然ですというように
「私は、そんなことは決してしません。直前になって連絡するなんて、失礼すぎます」
と、頷いた。Hさんは我々に対しても非常に丁寧で、年齢を考えると、とても礼儀正しいタイプ。聞けば、現職のメーカーA社は、ビジネスマナーや上下関係に厳しく、入社してからの2年間、みっちり目上の者に対する接し方を仕込まれたという。
Hさんの言動をみて安心した我々は、次々と面接のスケジュールを入れていった。
だが、最初の2社の面接は無事に済んだものの、3社目B社の一次面接のときに、事件が起きてしまった。
面接10分前、慌てた様子のHさんから電話がかかってきたのだ。
「す、す、すみません。い、いまB社のすぐ近くまで来ているのですが、残念ながらB社は辞退したいと思います」
我々は、彼の言う意味が理解できなかった。すぐ近くまで来ているのに辞退?なぜ?
なかばパニック気味のHさんを落ち着かせながら、我々は状況把握につとめた。Hさんは、B社に向かう途中、間違った駅で降りてしまい、面接時間に遅れそうになっていたのだ。
「分かりました。では、我々の方からB社に電話をしておきますから、Hさんは急いでB社に向かってください」
それを聞くと、Hさんはとんでもないと言いたげに、裏返った声を出した。
「私のような若輩者が、予定の時間に遅れるなど、決して許されることではありません。こうなった以上、辞退するのが礼儀です!」
そんなことはない。せっかく時間をつくってくれたのに、数分の遅れで辞退する方が礼儀を逸している。我々は繰り返しHさんを説得したが、彼は頑として自分の主義を曲げず、そのまま面接に行かず、応募自体も取り下げてしまったのだった。
面接を軽々しく考えてもらっては困るのだが、ここまで大ごとに思われても、それはそれでコトが前に進まなくなる。何ごともほどほどが良いのだが、感受性の強い若い人にはそれが一番難しいことなのかもしれない。
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