【ESMO2012事後リポート】COMPARZ パゾパニブmRCCの一次治療としてスニチニブに対する非劣性示す
公開日時 2012/10/18 04:00
転移性腎細胞がん(mRCC)に対する一次治療として、パゾパニブのスニチニブに対する非劣性が示された。安全性プロファイルでは、パゾパニブの方が好ましい可能性も示唆された。経口マルチキナーゼ血管新生阻害剤である両剤を直接比較した、過去最大規模の無作為化オープンラベル第3相試験COMPARZ(Pazopanib Versus Sunitinib in the Treatment of Locally Advanced and/or Metastatic Renal Cell Carcinoma)で明らかになった。9月27日~10月2日までオーストリア・ウイーンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で10月1日に開かれたProffered Paper Session「Presidential SymposiumⅡ」で、Memorial Sloan-Kettering Cancer CenterのRobert J. Motzer氏が報告した。(医学ライター/リポーター 中西美荷)
臨床第3相試験の結果から、mRCC患者におけるパゾパニブ、スニチニブの無増悪生存期間(PFS)延長効果は同等であることが分かってきた。一方、有害事象の発生頻度など安全性プロファイルが異なることも示唆されていた。
試験は、パゾパニブのスニチニブへの非劣性を示すことを目的に実施された。
主要評価項目はPFS。631イベント発生した時点で、独立評価委員会(IRB)がパゾパニブのスニチニブに対する非劣性を検討するものとした(非劣性のハザード比(HR):1.25)。副次評価項目は、全生存(OS)、奏効率(ORR)、有害事象、有害事象(AE)、QOL。
対象は、測定可能病変を有する未治療の淡明細胞型mRCC1110例で、▽パゾパニブ800mg1日1回連日投与(以下、パゾパニブ群)557例、▽ソラフェニブ50mg1日1回4週投与2週休薬投与(ソラフェニブ群)553例――に無作為に割付けられた。試験開始時の両群の患者背景に差はなく、年齢61歳、約7割が男性で、約8割が腎摘を行っていた。
◎Motzer氏「パゾパニブに特徴的なAEはより対処しやすい」
IRB評価によるパゾパニブ群のPFS(中央値)は8.4カ月(95%CI:8.3-10.9)、でスニチニブ群の9.5カ月(95%CI:8.3-11.1)に対するHRは1.047(95%CI 0.898-1.220)で、非劣性が証明された。
ORRはパゾパニブ群31%、スニチニブ群25%(p=0.032)。OS(中央値)はパゾパニブ群は28.4カ月(95%CI:26.2-35.6)で、スニチニブ群の29.3カ月(95%CI 25.3-32.5)に対するHRは0.908(95%CI :0.762-1.082)で有意差はみられなかった(p=0.275)。
全グレードで30%以上に発現したAEのうち、発現率に差がみられなかったのが(以下、パゾパニブ群対スニチニブ群)、下痢(63%対57%)、高血圧(46%対41%)、吐き気(45%対46%)食欲減退(37%対37%)。
一方、パゾパニブ群では、ALT上昇(31%対18%)、毛髪色の変化(30%対10%)、スニチニブ群では、手足症候群(29%対50%)、味覚障害(26%対36%)、血小板減少(10%対34%)が多く報告された。
Motzer氏は、「パゾパニブに特徴的なAEはより対処しやすいものである一方、スニチニブのそれは、“やっかい”(troublesome)で、QOLに影響を与えるようなAEだ」と指摘。実際、複数の評価法を用いて行ったQOL評価では、14項目中11項目において、パゾパニブ群の方が良好だったという。
mRCC一次治療の現状について、Motzer氏は「今回、パゾパニブのスニチニブに対する非劣性が示されたことで、mRCC患者の一次治療として、スニチニブ、パゾパニブ、ベバシズマブ+インターフェロンという3つの選択肢がもたらされた」と評した。また個人的な印象だと断った上で、「有害事象、QOLの点で、パゾパニブはより好ましい特徴を有していると考える」と述べた。