【ESMO特別版】PROFILE 1007 進行ALK陽性NSCLC患者にクリゾチニブ投与で標準化学療法上回るPFS、ORR示す
公開日時 2012/10/04 05:52
進行ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)において、クリゾチニブは、化学療法単剤と比べ、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長させ、奏効率(ORR)を有意に改善する――。両治療法を比較した初めての無作為化臨床第3相試験「PROFILE 1007」の結果から明らかになった。9月27日~10月2日までオーストリア・ウイーンで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO2012)で30日に開かれたセッション「Presidential Symposium I」で、Massachusetts General Hospital Cancer CenterのAlice T. Shaw氏が報告した。(医学ライター/リポーター 中西美荷)
クリゾチニブは、ALK、ROS1、METを標的とする小分子チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)で、進行ALK陽性NSCLCに対する高い臨床活性が認められている。Shaw氏らは、クリゾチニブが、進行ALK陽性NSCLCに対する二次治療として、標準療法である化学療法単剤よりも優れているとの仮説を検証する目的で試験を実施した。
対象は、2010年2月5日~12年2月23日までに、日本を含む21カ国105施設で登録されたALK陽性NSCLC患者347例。クリゾチニブ群173例、化学療法群174例(ペメトレキセド:99例、ドセタキセル72例)――に無作為に割付けられた。
試験開始時の年齢、性別、喫煙状態、腫瘍組織型は、両群で差がみられなかった。多くはECOG PS0/1(クリゾチニブ群:72例/84例、化学療法群65例/95例)だった。脳転移は両群ともに35%(60例)が有していた。
今回の報告は、事前に規定したPFSイベント数に達した12年3月30日をデータカットオフとした解析結果で、治療期間は、クリゾチニブ群11(1-37)サイクル、化学療法群4(1-30)サイクル、追跡期間(中央値)は、クリゾチニブ12.2(11.0-13.4)カ月、化学療法群12.1(10.6-13.6)カ月。独立機関で放射線学的に評価を行い、ITT解析を行った。
◎クリゾチニブ群 患者のQOL、肺がん症状も有意に改善
データカットオフ時点でのPFSイベント発生数は、クリゾチニブ100(58%)、化学療法群127(73%)の合計227イベントだった。PFS(中央値)は、化学療法群の3.0カ月に対し、クリゾチニブ群で7.7カ月で有意に延長していた(ハザード比(HR):0.49、 95%CI:0.37-0.64、p<0.0001)。またすべてのサブグループにおいて、同様の傾向を示した。
治療を受けた患者のみを対象とした、化学療法の薬剤別解析では、PFSイベント発生数/PSF中央値がペメトレキセド群72イベント(73%)/4.2カ月、ドセタキセル群54イベント(75%)/2.6カ月に対し、クリゾチニブ群100 イベント(58%)/7.7カ月で、クリゾチニブ群が有意に優れていた(対ペメトレキセドHR:0.59、95%CI:0.43-0.80、 p=0.0004、対ドセタキセルHR:0.30、95%CI:0.21-0.43、 p<0.0001)。
ORRは化学療法群19.5%、クリゾチニブ群65.3%で、クリゾチニブ群で有意に高かった(HR:3.4、95%CI:3.5-4.7、p<0.0001)。治療を受けた患者のみを対照とした薬剤別では、ペメトレキセド(99例)で29.3%、ドセタキセル(72例)で6.9%、クリゾチニブ(172例)で65.7%だった。
全生存(OS)は、イベント発生数がクリゾチニブ群49例(28%)、化学療法群47例(27%)の合計96イベント。この数値は最終OS解析に必要なイベント数の40%に相当する。
OS(中央値)は、化学療法群22.8カ月に対し、クリゾチニブ群は20.3カ月で、現時点での有意差はみられなかった(HR:1.02、 95%CI 0.68-1.54、p=0.5394)。
副次評価項目である、患者報告による症状およびQOLは、咳、呼吸困難、疲労、脱毛、不眠、痛みなど、多くの症状、QOLともに、クリゾチニブ群で有意に改善されていた(p<0.0001)。症状悪化までの期間(TTD)を延長したほか、肺がん症状(胸痛、咳、呼吸困難)も減少していた。
15%以上で発生、または両群で5%以上の差があった有害事象(AE)は、クリゾチニブ群で視覚障害、消化器系副作用、トランスアミナーゼ上昇、浮腫、上部呼吸器感染、味覚異常、めまいで、上部呼吸器感染以外は、既知のAEだった。化学療法群では、疲労、脱毛、呼吸困難、発赤が多かった。多くはグレード1/2だった。なお、吐き気、嘔吐はクリゾチニブ群で多かったが、化学療法群では制吐剤(20%対67%)、副腎皮質ホルモン(25%対94%)がより多く投与されていた。
グレード5(死亡)の原因は、疾患進行がクリゾチニブ群で14%(8例)、化学療法群3例(2%)。治療関連死はそれぞれ3例(2%、不整脈、消化器疾患または肺炎)、1例(1%、敗血症)だった。投与中止はクリゾチニブ群で多かった(30例17%対23例13%)が、治療関連での中止はむしろ化学療法群の方が多かった(クリゾチニブ群11例6%対化学療法群17例10%)。
◎Shaw氏 ALK陽性NSCLCセカンドライン以降の選択肢に
Shaw氏は、現段階でOSに差がみられなかったことについて、イベント数が十分でないことに加え、化学療法群からクリゾチニブ治療へのクロスオーバー率が高い(87%)ことの影響も示唆。「クロスオーバー補正後のHRは0.83(95%CI 0.36-1.35)で、クリゾチニブによるOSベネフィットが示唆されており、より長期の追跡が必要だ」との考えを示した。
その上で、有害事象が全般的に対処可能だったことに加え、患者評価でのQOL、肺がん症状が、化学療法群と比較して有意に改善されていたことは重要であることも指摘。「クリゾチニブを(セカンドライン以降の)治療選択肢として確立するものだ」と結論づけた。