エルロチニブ EGFR変異野生型NSCLCの二次療法でドセタキセルへの優越性しめせず
公開日時 2012/07/25 04:00
化学療法の前治療のあるEGFR変異野生型の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する EGFR-TKIのエルロチニブの有効性を検討したところ、ドセタキセルに比べ、無増悪生存期間(PFS)、奏効率(RR)、病勢コントロール率(DCR)のいずれも、優越性を示すことができなかった。イタリア人を対象に実施された臨床第3相試験「TAILOR(TArceva Italian Lung Optimization tRial)」の結果から分かった。M.C.Garassino氏が6月4日に開かれたOral Abstract Session「Lung Cancer-Non-small Cell Metastatic」で報告した。
試験は、EGFR変異野生型の患者を対象に、ドセタキセルに比べ、エルロチニブの優越性を検討する目的で実施された。今回の解析では、平均追跡期間20カ月間の中間解析結果が報告された。
患者対象は、EGFR遺伝子のエクソン19または21に変異のない野生型で、KRASの評価を行った18歳以上の進行性/再発性NSCLC患者。プラチナ製剤をベースとした前治療歴があり、ECOG PS は0~2とした。タキサン系による化学療法やEGFR-TKIによる前治療がある患者は、除外した。
52施設から登録された702例のうち、 ①ドセタキセル群(75mg/㎡ iv ,1,21日投与、35mg/㎡ iv 1,8,15,28日投与)110例②エルロチニブ群(150mg/日経口投与)109例――の2群に分け、治療効果を比較した。イタリア52施設から登録された。評価項目は、PFS、全生存率(OS)、安全性とした。患者背景は、平均年齢、性別、ECOG PS、KRASなどで、2群間に大きな差はみられなかった。
KRAS変異のPFSへの有意な影響みられず
ITT解析によるPFS(中央値)は、ドセタキセル群で3.4カ月、エルロチニブ群で2.4カ月で、エルロチニブ群で有意に短い結果となった(ハザード比(HR):0.69、(95%CI:0.52-0.93)、p=0.014)。6カ月時点のPFS率も、ドセタキセル群で28.9%、エルロチニブ群では16.9%で、エルロチニブ群で低い結果となった。この傾向は、PS、性別、KRASの変異型などサブ不ループ解析でも一貫した結果を示した。
多変量解析の結果、①ECOG PS(2 vs 0/1)(HR:3.19(1.87-5.43)、p<0.0001)②投与薬剤(ドセタキセル vs エルロチニブ)(HR:0.70(0.52-0.94)、p=0.019)――がPFSに有意に影響を与える因子であることが分かった。
KRAS変異は、有意な因子ではなく(p=0.441)、KRAS変異の有無に分け、PFS(中央値)をみても、変異陽性群の2.6カ月に対し、変異陰性群では2.4カ月で、両群間に有意差はみられなかった(HR:0.91(0.65-1.26)、p=0.55)。
RR(CR+PR)は、ドセタキセル群(94例)では13.9%、エルロチニブ群では2.2%、DCR(CR+PR+SD)はドセタキセル群で41.5%、エルロチニブ群で22.8%で、いずれも有意にエルロチニブ群で低い結果となった(p=0.004、0.007)。
重篤な有害事象を1つ以上発生したのは、ドセタキセル群14.4%、エルロチニブ群で13.1%、このうち薬剤関連性の重篤な有害事象は、3.8%、1.8%だった。 主要な毒性は、ドセタキセル群で脱毛症(29例)、無力症(8例)、好中球減少症(27例)など。エルロチニブ群では、皮膚毒性(14例)、吐き気、嘔吐(6例)など、予期されるものだった。
Garassino氏は「TAILORは、EGFR変異野生型の患者を対象に、エルロチニブとドセタキセルを前向きに直接比較した唯一の臨床試験」と意義を強調した上で、「ドセタキセルは、エルロチニブに比べ、PFS、ORR、DCRを有意に延長した」と述べた。なお、全生存期間(OS)は199の死亡例が起きた時点で、解析するとしている。