ノバルティス 抗がん剤グリベック 肺動脈性肺高血圧症で効能追加申請
公開日時 2012/04/18 04:01
ノバルティスファーマは4月17日、抗悪性腫瘍薬グリベックについて、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の効能追加に関する承認申請を行ったと発表した。同疾患の治療では肺血管拡張剤が使用されているが、それらとは異なる作用機序の薬剤で、肺血管拡張剤の次世代の薬剤として期待されている。オーファンドラッグの指定を受けている。
肺動脈性肺高血圧症の国内患者数は推計1万3000人~2万人。現在の治療法は、異なる作用機序の肺血管拡張剤2~3剤による併用療法が行われているが、グリベックはそれらで治療をしても状態が改善しない患者への新たな選択肢として位置付けされるという。
肺動脈内腔のリモデリングには、PDGF(血小板由来増殖因子)受容体キナーゼ、c-Kitキナーゼ、c-Ablキナーゼが関与している可能性が示唆されており、グリベックはこれらの各キナーゼに対して阻害作用を持ち、新たな作用機序を持つ。それにより、血管の内皮細胞や平滑筋細胞の細胞増殖を抑制して、血管内皮の狭窄、閉塞の改善が期待できるという。
既存の治療薬は、エンドセリン受容体拮抗薬(ヴォリブリス、トラクリア)、ホスホジエステラーゼ-5の阻害薬(レバチオ、アドシルカ)、プロスタグランジンI2(別名プロスタサイクリン)製剤(ケアロード、フローラン)の3系統の薬剤が使用されている。グリベックが承認されれば、これらの2~3剤による併用で効果が得られない患者が投与対象になる。
この疾患は臨床開発が盛んに行われており、現在、本誌の製薬企業63社に対する調査では、9品目が開発後期の段階(フェーズ2以降、小児の適応も含む)にある。フェーズ2以降の開発品には、Rhoキナーゼ阻害剤ファスジル(旭化成)や可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬リオシグアト(バイエル薬品)など、全く新しい機序の新薬も開発されており、将来は様々な薬剤によるコンビネーション治療の可能性が期待されている。
肺動脈性肺高血圧症の国内パイプラインリスト(フェーズ2、3以降の品目)は→こちら