EMAのCHMP委員長が突然辞任、利益相反が原因との見方も
公開日時 2012/04/12 04:00
欧州医薬品庁(EMA)は4月4日、ヒト医薬品委員会(CHMP)のEric Abadie委員長が辞表を提出、Guido Rasi理事長はこれを直ちに受理し、委員長を辞任したと発表したが、この発表を受けて欧米メディアは、同氏が2007年からCHMPの委員長を務める一方、フランス医薬品安全庁(AFSSAPS)の科学顧問を兼任していたことが、今回の辞任に関連があると憶測し、話題になっている。EMAは同氏辞任の理由について公式には何も明らかにしていない。
フランスでは、ジェネリック医薬品企業Servier社の糖尿病薬Mediatorの副作用問題で1976年から2009年11月までに500人が死亡したと伝えられ、同剤はスペイン、イタリアなどでは流通を禁止された以降も、フランスでは09年まで市場から同剤は市場から撤退されていなかった。
Abadie氏はこの時期にもAFSSAPS局長の科学顧問を務めていたが、適切なアドバイスを行わなかったことや、すでに倒産した仏・PIP社の豊胸手術用の有害な物質を含有していた業務用シリコンに製造許可を与えたことも問題視されている。AFSSAPS自体もフランス政府による調査対象となっている模様だ。
一方、EMAに対しても、2年前、当時のThomas Lonngren EMA理事長がEMA退職後、直ちに医薬品業界のコンサルタント企業に就職し、業界との癒着が問題視され、世論の怒りを買った経緯もあるため、再度、EMAへの信頼が揺らぎ始めている。
EUの行政・経済専門誌「EUobserver.com」によると、消費者保護団体のBeucは今回の問題の背景には、EMA幹部の利益相反の管理の甘さが背景にあると見て、欧州議会にポジション・ペーパーを提出したという。ポジション・ペーパーは、「EMAがその独立性や科学的見解の質、そして究極的には消費者が使う医薬品の安全性における消費者の信頼を獲得し続けるには、利益相反の効果的な管理がきわめて重要だ」と指摘、EMAには利益相反の管理が必要なことを強調している。
今回の問題は、EMAが4月3日にEMA幹部や各委員会委員などの利益相反管理の厳格化を発表した矢先だけに、余計に注目を浴びる結果となり、逆に様々な憶測を呼んでいるともいえそうだ。CHMPは当面、委員長の任務は、Tomas Salmonson副委員長が遂行するとしている。