小さくて大きなミス
公開日時 2012/03/21 04:00
花粉症のSさんは、この時期マスクが欠かせない。そして面接の日、彼女は…。
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転職の選考時間は短い。一生を左右する転職が、たった数時間の面接で決まってしまう…、考えてみれば身が震えることである。企業と相対する時間が短い分、転職者は、最高の自分を見せられるよう万全の準備をしなくてはならない。
だが、人間のすることにはミスがつきまとうもの。キャリア・スキル・人柄、そうした本筋ではなく、ちょっとした不手際でチャンスを逃してしまう人が、後を絶たないのが現実だ。
花粉アレルギーがあって、この時期に面接をする人は、色々と気を使う。腫れた目で鼻をすすりながら面接をするわけにはいかないし、薬との相性で眠気を引き起こしてしまうことも多いと聞く。
経理職希望のSさん(24歳)もかなりの花粉症だが、12月末に退職して1カ月、転職先を見つけなければと、転職活動に動き始めた。だが、経理のキャリアが1年未満しかなく、経験に劣るSさんには、なかなか声が掛からず、3月になってようやく娯楽事業A社の面接が決まったところだった。
書類選考落ちが続くなかで、ようやく得たチャンス。彼女なりに心構えをして面接にのぞんだはずだが、Sさんは本番の面接に、マスクを着用したまま、しかもなんの断りもせずに席に着いたのだった。
Sさんにとってこの時期、マスクは生活必需品。話を聞くと、どうやら目の悪い人がメガネを掛けるくらいの感覚だったらしい。面接後のSさんのコメント:「面接が始まって15分くらいした時、マスクを着用したままなことに気がついたのですが、面接官から何も言われなかったので、問題ないと思っていました」
かたや、面接したA社は、マスクをしたままのSさんに驚きつつも、初対面であるし、顔のキズかなにかを隠すためかもしれず、指摘するのもはばかられて、そのままにしたのだという。
面接後、A社と我々とのメールやりとりはマスクのことばかり。他に有力な候補者がいたこともあり、結局、彼女が二次選考に進むことはなかった。
広報Oさん(33歳)は自動車部品メーカーB社の最終面接に進みながら、ケアレスミスに泣くことになった。
クルマ好きのOさんは、以前、オープンカーに乗るのを趣味としていた。結婚前、奥様からもらった度付きのサングラスは、Oさんのお気に入り。天気の良い日は、現職にもたびたびこれを掛けていき、オフィスでビジネス用のメガネに掛け替えていた。
最終面接は、冬晴れの陽射しの強い日だった。何気なくサングラスを掛けて出たOさんは、緊張のせいもあったのだろう、眼鏡に掛け替えるのを忘れて役員面接に臨んでしまった。
B社の役員は、メーカーらしく堅い性格の人が多かった。現場は「ひとつのミスでOさんを取り逃がしてはならない」と言ってくれたが、社長に加え、広報部門を統括する役員も「重要なプレゼンテーションの前に、鏡の前に立たないようなスタッフがいては困る」と、Oさんの不採用が決まってしまった。
他にも、昼食にソバを食べ、海苔が歯についたまま面接に行き、「営業がアレでは困る」といって不採用になる等々…、些細なことが響いて不採用になる例はいくらもある。
「一生の問題が、こんなことで決まってしまうなんて…」
と嘆きたくなるが、転職者としては、むしろ逆に考えなくてはならないのだろう。
冒頭に述べたように、ごく短い時間でジャッジされてしまうのが転職の選考。だからこそ、小さなミスすら許されない。ほんの些細なことでも、転職の成否を決定する大ごとになり得るのだ。
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