忙しい忙しい
公開日時 2012/02/01 04:00
「いつも忙しい」というKさん。彼の要求に、我々は四苦八苦することに…。
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知的で冷静、それがマーケティング職Kさん(28歳)の第一印象だった。彼は我々との面談で、口癖のように我々に「いつも忙しくて」と繰り返した。
「不安はスケジュールがなかなか空かないことです。面接になっても都合がつくかどうか…」
「分かりました。出来るだけKさんの予定に合わせてもらうように、企業の方に伝えるようにしますね」
「忙しいので、電話で話している暇はとれないと思います。いちいちメモをとる手間もかかりますので、連絡はすべてメールでお願いします」
「確かに、メールの方が確実ですよね」
「それから、残業も多くてプライベートな時間が極端に少ないので、夜の連絡は控えてもらえますか」
「では、仕事中にメールのやりとりをしていただけるのですね?」
「はい、大丈夫です」
こうして、Kさんの転職活動がはじまったのだが、ほどなく、担当エージェントはKさんの高いレベルのご要望に四苦八苦することになった。
たとえば「来週のこの時間が空きました。面接の調整は可能でしょうか?2時間以内にお返事ください」といった連絡がしばしば来るのだ。
「申し訳ありません。採用担当者に何度も連絡しましたがつかまりません。いずれにしても、2時間以内にスケジュールをおさえるのは難しかったと思います」と連絡すると、その3分後にはKさんから「それはおかしいですね。企業には、私の予定を優先してもらえるよう、伝えてあるのではないのですか?」と、厳しい指摘が…。
他の緊急の案件を済ませて、1時間後に「企業にはKさんが多忙であると伝えてありますが、次は役員面接。その調整となると2時間ではなかなか難しいのです」とメールを打つと、10分以内に2件の返信があった。
ひとつは「それならそうと、私がメールを送った直後に教えてください。こちらは2時間ずっと待っていたんですから」、もうひとつは「言い忘れましたが、返信が遅すぎます。これからは私がメールを送ったあと、30分以内に返信をください」と手厳しいご注文。
クイックレスポンスは仕事の基本。Kさんの方はそれを実践しているのだから、我々に要求する権利はあるだろう。
しかし、転職エージェントには面談というものがある。とくに初回の面談は信頼関係を築く大事なポイントで、緊急の問題以外、その間の電話・メール対応はしないものだ。また、多くの転職希望者を担当するなか、すべてのメールに30分以内に返信というのはかなり難しいという事情もある。そういったことをKさんにお伝えすると、今度は…。
「分かりました。では、面談の入っている時間帯を私にも共有してください。その間は返信時間を猶予します」
という要望がきた。ここまでくると、上司以上にエージェントのスケジュールを把握していることになる。
手続きの煩雑さもあり、これはさすがにお断りさせていただいたのだが、一事が万事この調子で、しかもKさんからのメールはだいたい一日10回、多いときは20回近いという頻繁さ。担当エージェントはふぅふぅ言いながら、なんとかKさんに満足していただけるよう奮闘中だ。
もちろん、不思議に思うことはある。多忙をきわめているはずのKさんが、いったいどうやってまめに携帯をチェックし、10通以上のメールを書く時間を都合しているのだろうか?
ふと、こんな考えが頭をよぎる。
「ひょっとして、それほど忙しくないのでは…」
いやいや、それだけ転職に熱心で、優先順位が高いということなのだろう。そう信じて、今日もKさんのメールの返信を書き続ける我々なのであった。
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