面接後の適性検査にご用心
公開日時 2011/12/20 04:00
おっとりした性格のYさんは、アグレッシブな社風のA社に応募したのだが…。
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「地元は就職口が少ないので、東京で仕事を探そうと思っています」
純朴という言葉がピッタリくるYさん(23歳)は、聞く人の気持ちをほのぼのさせる独特の語り口で、転職に至った経緯を話してくれた。
地元の短大を卒業後、親類の経営する企業に就職、事務方の仕事を広く任されてきたが、経営が思わしくなく人員削減が必要に。それに伴い、Yさんは転職先を探すことになったという。
もっとも、Yさんは「私自身、都会に出てみたい気持ちがありましたし、率先して退職しようと思ったんです」と、今回の転職を前向きにとらえていた。
こうして始まった転職活動だったが、しばらくして我々は彼女の素養に驚かされることになった。ある会社の能力試験で、Yさんは過去最高の得点を記録したのだ。その会社とは勤務地の関係で縁がなかったのだが、採用担当者が
「大学院卒でも、こんな得点みたことがない」
というほどの成績だった。見た目がのんびりタイプのYさんとはかなりのギャップである。
話を聞いてみると、高校時代の担任には国立大学への進学を薦められたこともあったとか。
「進学校だったんで、先生はそう言って下さったんですが、私、あまり人の上に立とうとか、頑張って成功しようって考えになれなくて。それなら地元の短大で十分かなと思ったんです」
と、これまたおっとりのんびりした答が返ってきたのだった。
さて、このYさんが入社を熱望したのは、ガツガツ系の営業で知られる外資系A社だった。応募は営業事務職。
「私自身が前に出るのは苦手なんですけど、頑張っている人をサポートするっていうのはすごくやる気が出るんです。少し前の話ですが、中学時代はサッカー部のマネージャーをしていました」
一方、A社の方もYさんの採用に乗り気だった。
「最近めっきり言わなくなったけど、Yさん『癒し系』だよね。うちの現場(営業)には、彼女みたいなタイプが合うんですよ。試験の結果さえ問題なければ正式採用にしますから」
よもや、試験でYさんが落ちるとは思えない。採用は半ば決まったものだと我々は安心していたのだが、数日後、よもやの連絡がA社からとどけられた。
「何かの間違いでは?Yさんは、他の会社では過去最高点を出したこともあるんですよ?」
我々が食い下がると、A社の担当者は言った。
「能力試験は合格です。問題になったのは、性格面を測る適性検査なんですよ」
「適性検査?性格?」
「会って話した印象と、試験の結果が真逆なんです」
急いでYさんにこの件を話し合い、我々は何が起きたかを知った。
Yさんが適性検査を受けたのは、面接を受けた直後だった。A社のアグレッシブな雰囲気に感化され、同時に入社を熱望していたYさんは、決して偽ろうと思ったわけではないのだが、自分のおっとりした外見・喋り方を考え、適性検査だけでも『A社に向きのアグレッシブな人間』に近づこうと適性検査に臨んだのだ。
そして、頭の回転がよく、ペーパーテストを上手にこなす術を熟知しているYさんは、ものの見事にA社の社風と試験の結果を合致させてしまったのである。
「A社に入社したい、その為には、自分がA社向きの人間にならなければと考えすぎた結果なのだと思います」
我々のアピールに、A社の採用はほほ笑んだ。
「なるほど。特例になりますが、適性検査の再試験をしましょう。彼女に伝えて下さい。ぜひ、自分自身のままでいて下さいってね」
再試験の結果は、もちろん『問題なし』、無事Yさんは、A社で採用となった。
Yさんの場合はかなり極端かと思うが、面接後の適性検査で、ついつい相手の話に合わせよう、自分がよく見えるように考えて選択肢を決めよう、と思うのは人間なら誰にでも起きる心理だろう。
ただ、これも行きすぎれば自分のクビを締めることになりかねない。考えてみればシンプルなことのはずだ。自分自身でいられる会社、そうでなければ働き続けることは難しいのだから。
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