面接で厳しく応募者を問い詰めるSマネージャー。彼女のおメガネにかない、内定になったのは…。

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面接で厳しい言葉を投げかけられ、しどろもどろに…。転職活動をしたことがある人には、こうした経験がある人も少なくないだろう。
上司が部下を叱責しなくなったと言われる昨今、面接で厳しく問い詰められるのは、かなりのストレスに違いない。しかし、厳しく言われたからといって、必ずダメとは限らないのである。

服飾ブランドA社の管理部門チーフマネージャーSさんは、ある登録者が「女王様のよう」と表したことがある、厳しい面接官だ。

Sマネージャーは、応募者の話の不備を決して見逃してくれない。他の面接ではサラっと流して貰えるような内容でも、どこかしら綻（ほころ）びをみつけて追及をしてくるのだ。
間の取り方も絶妙で、沈黙と畳み掛けるような質問を交互に使う。これも面接した応募者の方が言っていたことだが「ハリウッドの法廷モノの映画のよう。Sマネージャーはやり手の弁護士、自分は証人席に座っているような感じ」とのこと。

「圧迫面接のつもりなんて、全然ないんですよ。ただ、当然の浮かんでくる疑問を聞いているだけです」
Sマネージャーはそう言うのだが、打合せの時ですら、彼女の厳しい口調に1、2キロ痩せたのではなないかと思うほど気疲れする。面接で厳しい質問を受け続けたら、どれほど消耗することか…、想像するだけで我々もゲッソリしてしまうのだった。

ただ、Sマネージャーは、どれだけ面接に来た人をコテンパンに打ちのめしても、それで即不採用にするというわけではなかった。無論、質問にかんしゃくをおこしてしまったりすればアウトだが、辛辣なことを言われてもグッと我慢して、誠実に返答を続ければ、それはそれで評価されるのである。

典型的だったのは、A社人事担当者の求人のとき。Sマネージャーの直属の部下というポジションであったため、最終の社長面接をのぞく、一次・二次・三次すべての面接をSマネージャーが中心になって取り仕切ったのだが、その枠で採用になったNさん（26歳）は、朗らかな好青年ながら、おっちょこちょいでワキが甘いところがあり、面接では、毎回泣かされんばかりに追い詰められることになった。

「……できると確信しています」
「確信…。まだ仕事を始めてもいないのに、どうしてそんな風に確信できるのか、その根拠を教えてもらえますか？」
「それはその、興味が持てる分野なので、意欲が高ければ身につく部分も大きいと思いますし…」
「思うと確信のあいだには、かなり差があるように思いますが」
「あの、独学ですが勉強しているところも…」
「独学にどのような意味があるとお考えですか？」
「…」

この調子でたっぷり一時間近くやられるのだから、たまらない。初回の面接が終わった時には、Nさんは落ち込んだ様子の連絡を我々にしていた。
「絶対、落ちたに決まっています…」
ところが、意外にも次に進んだことで、NさんはSマネージャーの寛容さに感激してしまった。二度目三度目の面接も、内容敵は大差ないものだったようなのだが、Nさんは
「あれだけ叱ってくれる上司は、なかなかいないと思います。A社は入社したい企業のトップです！」というほどのSマネージャーの信者になっていた。
一方のSマネージャーも「久々にいじめがいのある若者」という意味深なコメントと共に、Nさんを内定にした。

Sマネージャーの下、Nさんは今も叱咤をうけながら、元気に仕事を続けている。叱り叱られるのも相性、二人は名前の頭文字通り、磁石のS極とN極が引き合うようにうまくいくコンビだったのだ。
いや、この二人の場合、S極とM極というべきだろうか…。